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テリー伊藤 僕たちはどう死ぬのか

テリー伊藤(演出家)

矢沢永吉の価値観にやられる

 団塊の世代って、一緒くたにできないと思うんです。東京生まれの弱さみたいなものが自分にはありましたし、それはたとえば地方出身の人たちとは全く異なっている部分だったはずです。

 矢沢永吉と同い年なんですよ。彼は「東京で天下人になってやろう」と思って上京してくるわけだよね。そういうパワーが東京生まれにはない。

 僕が女の子のお尻を追っかけていた若い頃、井上陽水は「傘がない」って歌っているわけですよ。矢沢や吉田拓郎などは、「若大将」シリーズの加山雄三みたいに女の子の前で甘い歌を歌ってる連中に唾かけてやろうってぐらいの気持ちがあったと思うのね。彼らに比べると、僕たちはぬるかったですよ。

 大学を卒業した頃かな、「ぎんざNOW!」(TBS)に矢沢のキャロルが出てきたのを見たんです。それはもう衝撃でした。

 まずね、あの頃は革ジャンなんか着たら女の子にモテないと僕らは思ってたから。でも、矢沢は「革ジャン着れば、女にモテる」くらいの勢いなんですよ。この差がものすごくあった。今はそういう差ってわかんないと思うけど。あの頃は今みたいに価値観が多様化してなくて、「これとこれが勝利の方程式だ」っていうのがあったの。そんなときに、彼らは革ジャン着てくるわけ。もう、「やられた!」と思ったね。キャロルの価値観に。

 僕たちは、車で湘南まで行って、キスして、「星が綺麗だね」と囁くほうがかっこいいと思ってた。だけど、彼らはバイクの後ろに女の子を乗っけて、第三京浜走って、風に当たってるほうがかっこいいっていう価値観。バイクじゃカーセックスできないのにですよ。(笑)

 いつの時代もそうですけど、違和感って次の時代を制するんです。キャロルはカウンターカルチャーでした。

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