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米村でんじろう「苦学生から科学の伝道師へ」

米村でんじろう(サイエンスプロデューサー)

理科が好きになったわけ

 理科の実験が好きになったのも、時代の影響があったのかもしれません。1957年10月、ソ連が人類初の人工衛星「スプートニク1号」の打ち上げに成功したことで、西側諸国の政府や社会は「ソ連に出し抜かれた」と衝撃を受けました。

 アメリカはそれまでの教育を転換し、科学教育に力を入れて、10年以内に人間を月に送る目標を立てました。

 日本もその影響を受けて、科学教育に力を入れるようになりました。理科教育に特別予算枠を設け、どの学校にもいろいろな実験機材が揃えられました。科学や科学技術がこれからの世界を変えていくと、誰もが信じていた時代です。理科の先生も熱心で、フナやカエルの解剖、工作もよくなさっていました。

 育った自然環境も影響したと思います。当時はまだ外に明かりがなかったから、星がよく見えた。川にはドジョウやタニシ、ホタル、魚がいっぱいいた。カブトムシ、クワガタなど昆虫も溢れるほどいました。子供が興味を持つものが身の回りにたくさんあったわけです。

 千葉県の山は高くなく、川もあまり広くない。親しみやすい自然環境の中、子供だけで毎日遊んでいた。そこで生まれた関心や疑問に理科は答えてくれました。実生活での体験と理科の勉強はつながっていた。私は、いつの間にか理科と実験が好きになっていました。

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