地域活性化の役割担う
地域におけるまちづくりのツールや地域の製造拠点撤退後の再開発施設としてスポーツが有用ではないか。日本政策投資銀行はこうした考えから、2012年12月に、わが国スポーツ政策やスポーツ施設研究の第一人者である早稲田大学スポーツ科学学術院の間野義之教授を委員長とする「スマート・ベニュー研究会」を立ち上げた。
この研究会の調査成果は「スポーツを活かした街づくりを担う「スマート・ベニュー」~地域の交流空間としての多機能複合型施設~」と題するレポートにまとめ13年8月に公表した。
このレポートが後に、2016年における政府の成長戦略「日本再興戦略2016」に取り入れられた。「官民戦略プロジェクト10」のひとつ「スポーツの成長産業化」の具体的施策「スタジアム・アリーナ改革」にある多機能型施設の先進事例形成支援が「スマート・ベニュー研究会」のレポートに基づいた考え方である。
戦後のスポーツをめぐる政策は、1964年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会の開催機運を促すべく、官主導によりスポーツを国民に身近な存在とするために「スポーツ振興法」が制定されたことに始まった。そしてスポーツ施設整備における民間活力導入や民間スポーツ産業が台頭し、官主導から官民連携へ変化を遂げている。
その後、2020年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会招致を契機に、スポーツを日本社会の文化と定着するべく「スポーツ基本法」制定に至り、スポーツ庁創設以降のスポーツ施設整備とスポーツ産業の発展や地域活性化の役割を担う所に進化していくのである。
次回は、2015年10月にスポーツ庁が設立し、2016年6月の「日本再興戦略2016」において「スポーツの成長産業化」が記載されて以降、そして、コロナ禍を経て見直されるスポーツの社会的価値とアフターコロナ時代に求められるスポーツの存在意義について述べていくこととしたい。
1975年兵庫県西宮市生まれ。北海道大学卒業。早稲田大学大学院スポーツ科学研究科修士課程修了。1999年日本開発銀行(現 日本政策投資銀行)入行。北海道支店、中堅・成長企業ファイナンスグループなどを経て現職。さいたま市スポーツアドバイザー、宮崎市拠点都市創造アドバイザー、早稲田大学スポーツビジネス研究所招聘研究員なども務めている。