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黒井文太郎 ウクライナでも暗躍する民間軍事会社の実態

黒井文太郎(軍事ジャーナリスト)

戦闘現場の需要は縮小傾向

 このイラクとアフガニスタンでの米軍の活動は、前述したように巨大なPMCマーケットとなり、ブラックウォーター以外にも多くのPMCが参入した。PMC業界は基本的には巨額の予算を執行する米軍の海外展開に比例して需要が発生する。2003~10年あたりがPMCの需要の最盛期だった。その中でもピークにあたる04~05年頃のイラクでは、参入したPMCは35社、メンバーは2万人以上とみられる。

 ただし、それ以降は米軍の活動が縮小したことで、PMCの需要も大幅に落ち込んだ。PMCはもともと、紛争が激化している最中の単発の需要に大きく依存する。業界の構造的な宿命である。

 とはいえ、米軍では業務のアウトソーシングはすでに規定路線となっており、PMC自体はいまだ存続している。21年8月にアフガニスタンから米軍が撤退し、戦闘の最前線に立つような任務は現在はほとんどないが、訓練指導をはじめ、米軍の各地での活動におけるさまざまな部門の下請け業務をPMC各社は請け負っている。

 他方、現在もPMCの中には、秘密工作のようなものに参加している会社もあるかもしれないが、そのあたりの実態は情報が少なく、不明だ。
 また、今回のウクライナ侵攻に際して、開戦前はウクライナ国内で、開戦後はポーランドなどで、米陸軍特殊部隊「グリーンベレー」などがウクライナ軍兵士に軍事訓練を行っている。その業務の一部にPMCが関わっている可能性もあるが、それに関する情報は出ていない。

 このように、近代的なPMCはまず1990年代にアフリカ各地の紛争で警備や戦闘任務を請け負って成長し、2000年代に米軍の対テロ戦でピークを迎えたことがわかる。

 米軍が大規模な海外での治安維持任務から手を引いた現在、米国系PMCは米軍の業務のアウトソーシングで存続している。また、他にも海外進出企業の警備という欧米系PMCの需要は健在だ。

 さらに、欧米系のほか、中東系、あるいは中国系の警備会社を母体にしたPMCもあるようだが、そちらの活動内容はほぼ公表されておらず、規模や実態がきわめてわかりづらい。おそらく本国の政府・軍あるいは情報機関などと密接な関係にあって水面下で動いているケースが多く、ロシアのPMCも同様のカテゴリーに入る。

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