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宇野重規×中北浩爾 融通無碍に膨脹する保守――イズムを失い漂う左派

中北浩爾(一橋大学教授)×宇野重規(東京大学教授)

若者は保守化しているのか

――与党の政治勢力の安定的な伸長と、若者の安定志向や保守化は結びついているでしょうか。そもそも若者は保守化しているのでしょうか?


宇野 いろいろな調査を見ても、今の若者が保守化している明らかな兆候はありません。

 若者が保守化しているように見えるのは、政党との結びつきが希薄になっているからです。もともと日本は政党の根が浅くて組織化の弱い国ですが、特に若者は政党との間に大きな距離感がある。投票自体に意味を見出せていないし、どこかの政党に対して票を入れることにもリアリティが持てない。まだ与党に票を入れる人はいても、野党に入れる意義がわからなくなっていることから、保守化しているように見えるのです。多くの若者は社会に関心があるし、社会の役に立ちたいという人も多いのですが、みんな政治には関心がないし、政治には近づきたくない。政治は怖いという若者も多いのです。


中北 各種の世論調査を見る限り、国民全体についても右傾化の傾向はほとんど見られません。同性婚や選択的夫婦別姓の問題など伝統的価値観にかかわる争点では、若者を中心に左寄りに変化してきています。

 右傾化したとすれば、それは政治のほうです。リベラルな民主党との対抗上、自民党が右派の主導で自主憲法制定の党是などを再び強調するようになったあと、民主党政権の失敗で自民党「一強」状態になった結果、政治全体が右傾化した。しかし、有権者の意識からは乖離している、という分析が通説的だと思います。

 つまり、有権者が右傾化しているのではなく、中道から左の政党が弱体化したことが、最大の問題ではないでしょうか。いくら正しい意見を述べても、弱ければ実現できません。それに対して自民党は融通無碍で、とにかく強い。こうした構造が1994年以降の政治改革を経ても変わっていないどころか、さらに際立っています。

 左派がかつて存在感を放っていたのは、マルクス主義などイズムの魅力ゆえです。しかし、そうした知的優位も、今ではすっかり失われてしまいました。左派が若者を惹きつけられなくなった大きな原因でしょう。

(続きは『中央公論』2022年10月号で)

構成:戸矢晃一

中央公論 2022年10月号
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中北浩爾(一橋大学教授)×宇野重規(東京大学教授)
◆中北浩爾〔なかきたこうじ〕
1968年三重県生まれ。91年東京大学法学部卒業。95年同大学大学院法学政治学研究科博士課程中途退学。博士(法学)。専門は日本政治外交史、現代日本政治論。著書に『現代日本の政党デモクラシー』『自民党─「一強」の実像』『自公政権とは何か』『日本共産党』などがある。

◆宇野重規〔うのしげき〕
1967年東京都生まれ。91年東京大学法学部卒業。96年同大学大学院法学政治学研究科博士課程修了。博士(法学)。専門は政治思想史、政治哲学。著書に『政治哲学へ』、『トクヴィル 平等と不平等の理論家』(サントリー学芸賞)、『保守主義とは何か』『民主主義とは何か』などがある。
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