アナログな霞が関と、議員の問題
──自身のブログ「ごまめの歯ぎしり」でも、霞が関の働き方改革に関するアンケート結果を受けて、「離職意向が強い職員の特徴は、やりがいの実感度が低いことにある」と指摘しておられます(2022年5月25日掲載「霞が関の働き方改革アンケート」)。
やっぱり、つまらん仕事をやらせちゃダメなんです。デジタル化してもっと効率的にできるはずなのに、古くからのアナログなやり方が続いているせいでおかしな業務がたくさん発生しています。
いまだにアンケートを紙で配っていることもその一例です。紙で渡されたら手書きで返さないといけないし、さらにそれを誰かが入力しないといけない。最初からwebフォームなりを使えば自動集計できます。でもそのようなことがまだできていない。
──なぜそこで、デジタルのツールを使って効率化を図ろうという発想にならないのでしょう?
古い慣習が残ってしまっていることに加えて、霞が関がこれまでマネジメントにあまり重きを置いてこなかったことも理由の一つでしょう。予算を取ってくること、あるいはその政策を実行することが「結果」として求められており、マネジメントは人事評価でほとんど重視されてこなかった。だから根性論でどうにかしようとするタイプが管理職になっていたり、マネジメント研修と称してどこかの偉い人を連れてきて2時間しゃべってもらうだけなど、その後につながらないものが行われたりしていました。これからは管理職になる人にきちんとツールの使い方を教えて、研修もちゃんと行わなければならない。やらなければいけないことはたくさんあります。
──過去にたびたび与野党で申し合わせが行われているにもかかわらず、質問通告の遅れが常態化しているという議員側の問題もあります。内閣人事局が発表した調査結果では、昨年の臨時国会会期中、土日祝日を除く質疑2日前の正午を過ぎて行われた質問通告が8割を超えました(2023年1月20日「国会対応業務に関する実態調査結果」)。これは改善できるものなのでしょうか?
やろうと思ったらできないことはまったくないはずです。国によっては、1週間前で設定しているところもありますから。そこはやはり立法府に理解を求めなければいけないところです。
官僚側からすれば、2日前に通告をしてくれれば次の日の昼間に答弁を作って普通に帰れるのに、それができないから意味のない待機時間を過ごさなきゃいけない。
昨年の旧統一教会の法案審議の際には、結構早めに「こういう質問をしたらどこまで答えられるか」「それならここまで言える」「であれば、もう少しこういう方向にできないか」といったやりとりを、一部の野党議員とすることもありました。だけど前日の夜にポンと出されて朝9時から委員会となれば、その時間内でできた答弁でやるしかない。質問通告が早くなれば、議論の質も高まっていろんなことが変わる余地があると思います。
(続きは『中央公論』2023年5月号で)
構成:斎藤 岬 撮影:米田育広
1963年生まれ。米国ジョージタウン大学卒業後、富士ゼロックス入社。96年、第41回衆議院総選挙にて神奈川第15区で初当選。国家公安委員会委員長、行政改革担当、国家公務員制度担当大臣、内閣府特命担当大臣(規制改革、防災、消費者及び食品安全)、外務大臣、防衛大臣、新型コロナウイルス感染症ワクチン接種担当大臣等を歴任し、現職。