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テイラー・スウィフトは救世主なのか

辰巳JUNK(ライター)

テイラー効果は本当にあるのか

 テイラーの政治デビューは大規模に展開されていった。それまでは恋愛ソングの名手として知られていたが、2019年に発表した7枚目のアルバム『Lover』ではプロテストソングに挑戦。LGBTQ支援ソング「You Need to Calm Down」やフェミニズムアンセム「The Man」をヒットさせていった。ブッシュ批判で干されたチックスともコラボし、キャリア復活の手助けも行っている。

 ほかにも、音楽アワードの受賞スピーチで政権を批判したり、インタビューで「トランプはアメリカが独裁制の国だと思っている」と糾弾したりもした。翌年に発表された、テイラーを追ったドキュメンタリー映画『ミス・アメリカーナ』では、政治的沈黙を破って差別問題のために立ち上がらんと決意する姿が映されている。

 テイラーに滅多打ちにされたトランプは、彼女のファンでもあった。ゆえに、民主党支持表明を知るやいなや、「彼女の音楽への愛が25%下がった」というややおとなしめな反撃に出た。ただ、彼は選挙には自信を持っていた。「(当該投稿で糾弾された共和党候補)ブラックバーンはテネシー州でよくやっている。テイラーにはなんの影響力もないし、政治家についての知識もないだろう」。実のところ、ある程度、この言葉どおりになった。

 というのも、テイラーが支持した候補は惨敗したのだ。テネシー州の上院選挙において、ブレデセンの得票率は43・9%。対するブラックバーンが54・7%で圧勝している。下院のクーパーは勝利したものの、15年間も在籍するベテランの人気者だから既定路線だった。

 選挙の専門家の間では「テイラー効果」への疑問の声もあがっている。

(続きは『中央公論』2024年5号で)

中央公論 2024年5月号
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辰巳JUNK(ライター)
〔たつみじゃんく〕
平成生まれ。セレブリティや音楽、映画、ドラマなど、アメリカのポップカルチャー情報をWebメディア等に寄稿。著書に『アメリカン・セレブリティーズ』がある。
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