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毎日・日経・読売の元政治部長が語る、気になる女性政治家の実力と個性

佐藤千矢子(毎日新聞論説委員)×吉野直也(日本経済新聞国際報道センター長)×伊藤俊行(読売新聞編集委員)
伊藤俊行氏(左)、佐藤千矢子氏(中央)、吉野直也氏(右)
 上川陽子、高市早苗、野田聖子、小池百合子・・・日本初の「女性総理」候補として取りざたされる政治家各氏の実力と個性について、永田町を長年取材してきた全国紙の元政治部長3人が徹底分析する。
(『中央公論』2024年7月号より抜粋)

局面を打開するためのサプライズ

――岸田文雄内閣の支持率が低迷する中で、「ポスト岸田」に女性が就く可能性が取りざたされています。


吉野 いわゆる「サプライズ」で政治を揺り動かし、局面を打開する方法の一つとして「女性総理」という選択肢が出てきています。これはジェンダー平等に注目しているようでいて、実は、日本政治における女性の希少性を政治的なパワーに転化しようとしているのだと見ています。


佐藤 背景にあるのは、日本政治の閉塞感だと思います。「失われた30年」で経済が停滞し、格差が広がった。それに対応できていない社会政策の歪みといった現状を打破したいという願いが国民の中にある。そのために新しいリーダーに出てきてほしいという期待感が高まっていると感じています。

 コロナ下で、ドイツのメルケル前首相、台湾の蔡英文前総統、ニュージーランドのジャシンダ・アーダーン元首相らのリーダーシップが目立ったことも、女性リーダーに期待する雰囲気の醸成につながりました。

 目先の事情もあります。9月に自民党総裁選があり、岸田総理の再選の可能性も含めてリーダー選びが行われます。来年10月の任期満了までには衆院選があり、来年の夏には参院選があるから、選挙に勝てるリーダーを選びたい。まさに希少性のある初の女性リーダーを選び、自民党の人気を盛り返して勝利したいという思惑があるのでしょう。


伊藤 リーダーさえ代えればうまくいくというのは思考停止です。動機はどうであれ、女性リーダーを望む意見が自民党の中からも出てきているのはよい傾向ですし、まずは誕生させることが大事だとは思いますが、次の選挙で負けないためにとりあえず女性をリーダーにし、喉元過ぎれば熱さを忘れる、とばかり同じような政治姿勢に戻していく臭いがしてならない。男女問わず、能力がある人をリーダーにするという持続的な動きにつながっていくのかという疑問はあります。

 その上で、自民党総裁の候補として名前が挙がっている上川陽子外務大臣のほか、前回2021年の総裁選に出馬した高市早苗さんや野田聖子さんも出て「女性だけの総裁選」の構図になれば、自民党は大変な注目を集めることになる。それを見た野党は、立憲民主党が代表を泉健太さんから女性に代えるかもしれない。すでに社民党党首は福島瑞穂さん、共産党委員長は田村智子さんです。全政党の党首が女性となれば、日本の政治をドラスティックに変えるきっかけになるかもしれません。


吉野 政党や企業といった組織における女性の希少性は「多様性」とも形容されます。多様性が日本の停滞、政治の閉塞感の打開につながるのならば、能動的に多様性を作り出し、国家の成長につなげなければいけない。女性総理の誕生に期待するのは、その先にある「変化の常態化」です。


佐藤 役員に占める女性の割合が高い企業は株価のパフォーマンスが良いという調査結果もあります。さらに企業には「外圧」もある。昨年、ある日本企業の株主総会で、トップの再任決議が危うく否決されそうになった。女性取締役がいないことを理由に、海外の議決権行使助言会社が賛成しなかったからではないかと話題になりましたが、永田町には外圧が効かないので変革が進みません。

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