毎日・日経・読売の元政治部長が語る、気になる女性政治家の実力と個性
仲間作りと政治家の言葉
伊藤 従来の自民党のやり方や永田町の作法から言えば、佐藤さんのおっしゃった通りだと思います。上川さんは閣僚になる前、私も時々行く赤坂のビストロに一人でいらしては食事をしていたそうです。昼や夜の日程をほとんど入れずに一人でご飯を食べる、つまり、仲間を増やす動きをしてこなかったわけです。
自民党のトップになろうとする人とは違う行動パターンだった方が総裁になるには、かなりイレギュラーなことが起き、ワンチャンスをものにしなければ無理です。次の総裁選、もしくは岸田総理が再選された後に自民党が立ち行かなくなった時の、どちらかの一発勝負しかないと思います。
吉野 政治家にとって一番大切なのは、その人自身から発せられる言葉です。上川さんを直接取材したことはありませんが、官僚が用意した文章を一生懸命に読んでいるだけで、自分の言葉があるようには見えません。
総理を目指すのであれば、目指す国家像を自分の言葉で語らなければいけない。期待も込めて言うと、上川さんはまだそこまでには達していないのではないかという気がします。
佐藤 私は上川さんに何度かお会いしたことがあり、少し違う印象を持っています。上川さんは政治家になることを決意してから初当選までに7年もかかり、その後も落選を経験しています。
その時に地元を一生懸命に回ったことで、政治家として鍛えられたところがある。血の通った自分の言葉で語れる方だと思います。ただ、5月に静岡県知事選の応援演説で「この方を、私たち女性がうまずして何が女性でしょうか」と自民党推薦候補への支持を訴えた件では、「不適切な表現」と批判を浴び、発言を撤回しました。こうした問題を今後、乗り越えていけるかどうかはわかりません。
保守の高市氏、リベラルの野田氏
――上川さん以外はいかがですか。
(続きは『中央公論』2024年7号で)
構成:戸矢晃一
1965年愛知県生まれ。名古屋大学卒業。87年毎日新聞社入社。ワシントン特派員などを経て、2017年に全国紙で女性として初めて政治部長に就いた。22年4月より現職。著書『オッサンの壁』は、台湾でも翻訳出版されている。
◆吉野直也〔よしのなおや〕
1967年神奈川県生まれ。慶應義塾大学卒業。93年日本経済新聞社入社。ワシントン特派員、政治部長などを歴任。2023年6月より、ポッドキャスト番組「吉野直也のNIKKEI切り抜きニュース」で情報発信中。著書に『アメリカ大乱』など。
◆伊藤俊行〔読売新聞編集委員〕
1964年東京都生まれ。早稲田大学卒業。88年読売新聞社入社。政治部、ワシントン特派員、国際部長、政治部長などを歴任。2020年6月より現職。BS日テレ報道番組「深層NEWS」コメンテーターも務める。著書に『右傾化のからくり』がある。