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少子化対策はスウェーデンの苦闘の歴史から学べ

宮本太郎(中央大学教授)
写真提供:photo AC
(『中央公論』2024年7月号より抜粋)

 日本が人口減少と経済停滞にいかに対処するかを考える際に、スウェーデンの経験から何を学ぶかが問われている。スウェーデンは手厚い福祉政策と高い経済成長率を両立させてきた国として知られるが、日本ではこれまで、その意義を強調する議論は、どちらかといえば野党やリベラル陣営に多かった。ところが近年では、政府の少子化対策や雇用政策にスウェーデンの影響がはっきり読み取れるのである。

 岸田政権が「異次元」の少子化対策の目玉としている所得制限なしの児童手当は、スウェーデンが1948年に少子化対策の基軸として導入したものである。若い世代が結婚して子どもを持てる経済条件こそ重要という指摘に対して、政府は「こども未来戦略」(2023年12月閣議決定)で若い世代の所得を引き上げる重要な手段としてリ・スキリング(教育訓練による学び直し)を挙げた。リ・スキリングを軸とした政府の「三位一体の労働市場改革」も、スウェーデンの積極的労働市場政策とそっくりである。

 スウェーデンの少子化対策や雇用政策は、これまで大きな成果をあげ、それゆえにドイツやイギリスなど先進国がこぞって取り入れてきた。岸田政権が先進国に広がったスウェーデンモデルに強く影響されていることは間違いない。四半世紀前からスウェーデンの経験の重要性を唱えてきた私からすると、こうした展開には感慨深いものがある。だが、併せて次の2点を強調する必要がある。

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