組織の同質化と硬直化
市長としてリーダーシップを発揮する上で一番ぶつかったのが、市の職員でした。市役所は終身雇用・年功序列の世界なので、私が直接仕事をする相手は、年上の男性管理職がほとんどです。とりわけ就任直後は、そういう方から机をドンと叩かれたり、ドアを激しく閉めて出て行かれたりすることがありました。
当時は驚き、「私が年下の女性だからだろうか?」と思っていました。でも今振り返ると、性別や年齢の問題というより、「従来のやり方を変える」ことへの反発だったのではないかと思うのです。
時代とともに人口構造が変わり、それに合わせて行政の側も変わらなければいけないのですが、市役所の中にいるとその変化に気づくのがなかなか難しい。職員からは、私の改革案に対して「いや、この部署の予算はずっとこれくらいです」「これまで何十年、このやり方でやってきたんです」という、現状維持を望む意見がすごく強かったんですね。そういう組織風土を変えるのは、大変なことだと実感しました。
でもこれは、市役所の中だけで起きていることでしょうか。日本経済が「失われた30年」と呼ばれる長い低迷期から脱せないのは、終身雇用・年功序列が主流だった日本企業において、組織が同質化・硬直化してしまっているから。その中で前例踏襲にとらわれていることが、日本から世界を変えるようなイノベーションが長年生まれてこなかった一つの原因なのではないでしょうか。