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「富岳」の正体③ 富岳の「使いやすさ」は米中スパコンを圧倒――性能ランキング「TOP500」創始者に訊く  

ジャック・ドンガラ×聞き手:小林雅一

富岳の開発費をめぐって

─米国が現在開発中の次世代スパコン「オーロラ」の費用(予算)は約六億ドル(約六三〇億円)、これに対し富岳は約一二億五〇〇〇万ドル(約一三〇〇億円)です。このため「富岳は割高だ」との批判もありますが、日本の関係者は「米国と日本では予算の計算方法が違うだけで、実際のコストはほぼ同じ」と言います。これは本当でしょうか。

 実際、そうかもしれませんよ。と言うのも、オーロラの六億ドルという値段は実はハードウェアの開発製造コストに過ぎないからです。しかし実際に使えるマシンにするには、その上にOS(基本ソフト)や各種アプリのようなソフトウェアを搭載する必要があります。

 また、それ以外にもいろいろな追加コストがかかりますよね。ですから、それらを全部足し合わせると、その二倍くらいになってもおかしくない。私は日本側がどのようなコスト計算をしているか存じませんが、日米で実際の費用が同程度になっても驚きませんね。

─日本のコンピュータ科学者によれば、中国が開発したスパコンは高速だが、とても使い難い、あるいは使い物にならない「ショウケース・マシン(テストで良い結果を出すためだけの見せ物)」と言われています。この意見にあなたは同意しますか。

 中国のスパコンが「使い難い」という点には同意しますが、それは「Summit」のような米国のスパコンでも同じです。両者は同じくらい使うのが難しい。しかし、中国のスパコンが「ショウケース・マシン」であるとは思いません。中国の科学者は自国のスパコンを使って実際の問題に取り組み、研究成果を上げて非常に高く評価されていますよ。

─どんな事例がありますか。

 毎年ACM(米国計算機学会)が授与する「ゴードン・ベル賞」という有名な賞があります。これはHPCアプリケーションにおいて過去の事例を上回った研究成果に与えられます。中国の研究者は二〇一七年にTaihuLightを使い、地震シミュレーションで優れた業績を上げて同賞を受賞しています。

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