第1回発表当時の『中央公論』の記事には、新書大賞のあり方について、こう記されています。
手軽な媒体を通して、さまざまな書き手の豊富な内容に接しうるようになった一方、あまりの数の多さに、何を読んだらいいのか戸惑う人も多いのではないでしょうか。また点数が増えたことで、質に問題のあるものが目に付くようになった、との指摘もあります。「一級の学者・専門家が、一般読者向けに分かりやすく研究テーマを解説した入門書・啓蒙書」という従来の新書のイメージが消え去ったわけではありませんが、自らの個人的な体験を綴ったものやタレントの告白本まで、ありとあらゆる内容が盛り込まれる媒体と化しているのも確かです。それだけ読み手の側に、見極める目が求められる時代になったと言えるでしょう。
(『中央公論』2007年3月号「発表! 目利きが選んだ二〇〇七年のオススメ」)
決して個人的体験やタレント本が新書にふさわしくないと言っているわけではなく、これも新書大賞を始動するにあたり、「何を読んだらいいのか戸惑う人」のためのブックガイドとしての性質を重要視したことがうかがえます。そして、その発足の精神は依然として、今の新書大賞にも引き継がれています。
雑誌の一特集として始まった新書大賞。「『中央公論』の編集部が面白がって作っちゃった」賞であるという発足前夜ストーリーそのものが、生粋の新書大賞魂を表すようで面白いですね。