その本はいったい何者か
「構成がミステリ小説」
「犯人が思いもよらないアイツ」
(水野太貴さん(@yuru_mizuno)のツイートより)
たとえば「何かに殴られたかのような衝撃」というコピーがあったとします。実際に誰かに本で殴られるなんて事態が起きるわけはなく(本自体が分厚くてハードな、いわゆる"鈍器本"であるかどうかはさておき)、ただの比喩であることは読者も承知の上です。
しかし、その本から受ける印象とまったくかけ離れた言葉がレビューに使われていたりすると、かえって、「まさかそんなハズはない」と手を伸ばしてしまうのが、おもしろいモノを求めし者の心理。
真面目で硬派というイメージのある中公新書のなかでも、とくに堅そうな本なのに「ミステリ小説」だなんて、一体どういう内容なんだと、つい気になってしまいます。
そうして読み手の間口が広がったことが功を奏したのか、『言語の本質』の盛り上がりは、読者層にも表れ始めました。
たとえば同じ「言語」をテーマにした、中公新書『日本語の発音はどう変わってきたか』(2023年2月)のボリュームゾーンは60~70代。それに対して、『言語の本質』は20代読者も多くいます。全体として、様々な層の方に読まれていると考えてよさそうです。
『日本語の発音はどう変わってきたか』についても、その内容は企画会議の段階でも「かなり難しいほうだ」と言われていましたが、発売当初から支持を得て、これまで4回の重版を重ねました。言語学ムーブメントであるといっては乱暴かもしれませんが、実際、「言語学」に興味関心が集まっているかと思います。
言語学は、これから学ぼうという意欲のある学生はもちろん、子育てに奮闘する親世代の関心も強く引くようです。
弊社でも、例にもれず「これ読んだ?」「面白かったよ」という声が飛び交いました。自分自身や子どもに関連づけて読んだり、生活の場面に重ねて読んだという声も。
言語学は、ChatGPTが台頭するなか、これからの社会を展望するうえで、重要な役割を担う学問であることがうかがえます。