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石田光規 最適化・リスク回避を目指す人間関係の行く末

石田光規(早稲田大学文学学術院教授)

コスパとリスク回避の狭間で

 自ら動かなければつながりが得られない時代とは、つながりから離脱しやすい時代、あるいは、つながる相手を選びやすい時代とも言い換えられる。

 結婚願望や恋愛願望が低下した背景には、私たちが、個々人の選択や意思を尊重するようになったという事情もある。結婚すること、恋愛することも人それぞれ自由というわけだ。

 しがらみや強制という形で、私たちを束縛する人間関係は着実に縮小している。だからこそ私たちは、つながりを欲するならば、自らの意思で積極的に動き、関係を築いてゆかねばならない。

 このような状況は、つながりづくりにおける二つの指向を涵養する。つながりの最適化とリスク回避の指向である。

 社会の要請から強制的につきあわざるを得ない関係性が縮小し、誰とつきあうか/つきあわないかを自己選択的に決められるようになれば、人びとは自らにとって「よい」と思える相手とつきあいたいと考えるだろう。人間関係に限らず「好きに選択できます」と言われれば、たいていの人は、一番よい選択をしたいと考えるものだ。

 自らが積極的に動かなければつながりを築いてゆけない社会では、つながりの最適化を促す圧力が働くのである。だからこそ、冒頭で挙げた学生は、コスパを意識しながら友だち関係を管理しているのだ。

 しかし、誰もが最適化を考えるようになれば、当然ながら、「最適」なつながりからあぶれるリスクも生じてしまう。私が誰かとつきあうことを望んでも、相手が同じ思いを抱いてくれるとは限らない。ゆえに、私たちは、つながっていたいと思う相手ほど、その人から切り離されるリスクを恐れ、気を遣ってしまうというジレンマに陥る。

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