コスパとリスク回避の狭間で
自ら動かなければつながりが得られない時代とは、つながりから離脱しやすい時代、あるいは、つながる相手を選びやすい時代とも言い換えられる。
結婚願望や恋愛願望が低下した背景には、私たちが、個々人の選択や意思を尊重するようになったという事情もある。結婚すること、恋愛することも人それぞれ自由というわけだ。
しがらみや強制という形で、私たちを束縛する人間関係は着実に縮小している。だからこそ私たちは、つながりを欲するならば、自らの意思で積極的に動き、関係を築いてゆかねばならない。
このような状況は、つながりづくりにおける二つの指向を涵養する。つながりの最適化とリスク回避の指向である。
社会の要請から強制的につきあわざるを得ない関係性が縮小し、誰とつきあうか/つきあわないかを自己選択的に決められるようになれば、人びとは自らにとって「よい」と思える相手とつきあいたいと考えるだろう。人間関係に限らず「好きに選択できます」と言われれば、たいていの人は、一番よい選択をしたいと考えるものだ。
自らが積極的に動かなければつながりを築いてゆけない社会では、つながりの最適化を促す圧力が働くのである。だからこそ、冒頭で挙げた学生は、コスパを意識しながら友だち関係を管理しているのだ。
しかし、誰もが最適化を考えるようになれば、当然ながら、「最適」なつながりからあぶれるリスクも生じてしまう。私が誰かとつきあうことを望んでも、相手が同じ思いを抱いてくれるとは限らない。ゆえに、私たちは、つながっていたいと思う相手ほど、その人から切り離されるリスクを恐れ、気を遣ってしまうというジレンマに陥る。