コンサルで無力感に苛まれ
――民間主導で人口減少問題に取り組む「未来を選択する会議」(以下「会議」)の共同代表に就任されました。それまでの経緯は?
国家公務員時代に、東日本大震災が起こり、復興支援で福島を訪れました。退職後はコンサルティング企業で地域活性化事業に携わり、その後、福島で起業しました。そうした活動を見てくださった方から、声がかかったのだと思います。
すべてのきっかけは、15年ほど前に経済産業省で「ローカル経済圏」について考えるチームに関わったことです。そのチームのトップが、西山圭太さん(現東京大学未来ビジョン研究センター客員教授。「会議」の中核組織「未来に向けた対話チーム」の主査でもある)でした。その縁で、西山さんともう一度仕事をしたいと思ったことが一つ。また、前々から問題意識があり取り組みたいと思っていたことが、この組織でなら実現できると思ったことです。それについては後でお話しします。
振り返ってみると、経産省で地方経済に対する問題意識が深くなり、さらに東日本大震災後の復興に役立ちたいと思ってコンサルに転職したのが2014年。しかし、それが人生最悪の時代の始まりでした。
地方創生にしろ人口減少対策にしろ、これまで政府や諮問機関はいろいろな政策や提言を出してきました。いずれもすごく正しいと思います。しかし、正しさだけで世の中は変わらない。例えば2014年に増田寛也さんが中心になってまとめたレポートの「消滅可能性都市」という表現は、人口減少社会の行く末を明確に提示しましたよね。これを機に危機感をもった自治体は多いと思います。
でも、いくら正しい提言だったとしても、自治体はそう簡単に対応できません。自治体ごとに事情が違うし、そもそも人口減少社会においては、職員のマンパワーがきわめて限られています。だから時間も労力も割きたくても割けないし、ノウハウも乏しい。やる気がないとか能力がないとかそういう問題ではないのです。そんな状況で、政府から縦割りの各省の政策を寄せ集めたような膨大な文章の提言があっても、何もできないですよ。
だから自治体は、打ち手を示してくれそうなコンサルに依頼するわけです。震災後の復興支援や地方創生ブームもあって、特に東京の大きなコンサル会社には多くの自治体から依頼が入りました。
ではコンサルの一員だった私がその期待に応えられたかといえば、けっしてそうではない。正直なところ、どうしようもない計画を立てている自覚がありました。「役人上がり」というだけで大きな仕事を任され、復興のためといいながら莫大な税金を使い、自分の人生の時間も使い、それでいて、その仕事が本当に地方の役に立っているという実感はありませんでした。
本来なら現場の人たちの給料が上がるような経済をつくらなければいけないはずなのに、コンサルだけが儲かって、地方は何も変わらない。すごく矛盾していますよね。
だから、本当に辛かった。もう罪悪感と無力感が募るばかり。頭皮に10円ハゲが三つもできて、なかなか消えなかったほどです。
結局、コンサルは3年で辞めました。無力感ともどかしさに苛まれながら仕事を続けるくらいなら、無職のほうがいいとまで考えるようになって。それで、もらい過ぎたお金を地方にお返ししたいとの思いもあり、福島で会社を立ち上げたわけです。