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谷川嘉浩 ネタバレ忌避派と積極派の意外な共通点

谷川嘉浩(京都市立芸術大学特任講師)

スマホ時代のメディア環境

 現代は、総表現社会であり、コンテンツの供給過剰社会であり、コンテンツの可処分時間を奪い合う社会であるという三つの観点から、現代メディア環境の特徴を理解することにしよう。

 様々なアプリケーションやプラットフォーム、そしてスマートフォンを使うことで、人々の表現に対するハードルが下がっていると言われる。簡単にウェブページを作れるし、TwitterやInstagramは簡単に自己開示・自己演出を可能にしてくれる。GarageBandやVOCALOIDを使えば作曲ができるし、YouTubeや動画編集ソフトを使えば簡単に動画の録画・編集・投稿・配信ができるし、CLIP STUDIO PAINTやInDesignなどのソフトを使えば、かつては熟練した末にようやく到達できていた作画や編集の妙が、大衆の手の届く範囲にまで近づく。ここにあるのは、かつて経営者の梅田望夫(もちお)が「総表現社会」と呼んだものの極限である。

 こうして生まれる膨大な新規コンテンツだけではない。人々は、例えばNetflixなどの動画配信サービスを通じて、無数のアーカイブ(過去のコンテンツ)に後追い的に接することができる。他にも、Nintendo Switch Onlineというサービスでは、数十年前のレトロゲームが遊べるようになっている。あまりに選択肢の多い、コンテンツの供給過剰社会と言うほかない。

 膨大な量のコンテンツに、私たちはどのように接しているだろうか。移動や会議のときに、寝起きの布団の中で、料理中に、そしてトイレや風呂にいるときに、映像、絵、音、文字などのコンテンツに、いつでも触れることができる。スマホという持ち歩けるマルチタスクデバイスのおかげだ。Netflixをモニターで流しながら、イヤフォンで音楽を聴き、スマホ上で画像をレタッチ(加工)して友達に送り、さっき買った電子書籍のダウンロードを待っている、というように、並行的にコンテンツに接することも珍しくない。

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