谷川嘉浩 ネタバレ忌避派と積極派の意外な共通点

谷川嘉浩(京都市立芸術大学特任講師)

マルチタスク化する消費

 こういうメディア環境において、私たちのコンテンツとの付き合い方は根本的に変化している。比較的少数の中から鑑賞するコンテンツを選んでいた時代には、作品は特定の場所、特定の時間に、ピンポイントで楽しむもので、鑑賞には手間がかかった。映画は映画館で観るものだったし、そうでなければ、レンタルビデオ店で借りてきて観なければいけなかった。コンテンツを供給・流通する側に主導権があって、近隣の映画館やレンタル店が扱っていない映画は、存在しないに等しいものだった。

 今はそうではない。Disney+やNetflixなどに入会すれば、レンタル店など物の数ではないほど膨大な作品に接する権利を得る。ダウンロードしておいた映画を電車移動の際にスマホで観ることもできる。

 もちろんコンテンツは映画だけではない。単話ごとに読める漫画アプリ、TikTokやリールなどの短い動画、オーディオブック、誰かのInstagramの投稿を信号待ちのちょっとした時間に見るのかもしれない。パソコン作業中にモニターの端っこで、Podcastや配信イベント、ゲーム実況や連続ドラマを流したりするのかもしれない。そうした鑑賞と並行して、SNSで感想をつぶやいたりするのだろう。作品の感想を述べたり、ファンアートを描いたりすることも今や容易だ。

 要するに、ある特定の場所と時間に、ピンポイントで楽しむものであった娯楽は、暮らしの細かな時間に割り込むことができるようになり、別の行為と並行して楽しまれるようになった。現代の消費は「マルチタスク化」しているのだ。

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