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黒川博行×後藤正治「司馬遼太郎、池波正太郎、藤沢周平......時代を築いた昭和の作家たち」

黒川博行(作家)×後藤正治(ノンフィクション作家)
後藤正治氏(左)、黒川博行氏(右)
 昭和の時代には「国民作家」と言われた作家がいた。その一人、藤沢周平についての評伝『文品─藤沢周平への旅』を上梓したばかりのノンフィクション作家の後藤氏と、昨年作家生活40周年を迎えた直木賞作家の黒川氏が、自身が親しんだ昭和の作家たちを語り合う。
(『中央公論』2025年5月号より抜粋)

40年来の付き合い

後藤 黒川さん、久しぶりだね。


黒川 最近は二人とも歳取って外に出なくなってあまり会わなくなったけど、多いときは2、3ヵ月に一回は会ってたかな。でも、いつから付き合うようになったかは全く憶えてない。(笑)


後藤 僕の記憶だともう30数年になるかな。僕は昔から「黒川ファン」でしたよ。


黒川 だいたいノンフィクションとフィクションの作家は、普通は付き合いないんですよ。お互いデビューも近くて、たまたま共通の知り合いの編集者が関西に来るときに、一緒にメシ食ったり、酒を飲んだりしていた。


後藤 ただ、一度もむつかしい話はしたことない。今日が初めて。(笑)


黒川 大阪の新地で「ソ満国境の会」っていうひどい名前の会があって、そこでテレビや新聞社の記者と一緒になったりもしたな。物書きは、自分と後藤さんくらい。


後藤 どんな話をしていたかはまるで憶えていませんね。


黒川 むつかしい話は誰もせんかった。


後藤 関西の物書きのつながりで言うと、かつては黒岩重吾(くろいわじゅうご)さんが元締め役だったのかな。


黒川 昔は黒岩さんがボスやったね。そのまわりに阿部牧郎(あべまさお)さんとかがいた。


後藤 黒川さんとは一度、東京で偶然会ったこともありましたね。四谷の信号で待っていたら、「後藤さん!」と誰かに呼ばれて周囲を探したら、タクシーの窓から黒川さんが手を振っていて。「どこ行くんや」と聞かれて、ホテルに帰ると言ったら、「そんなん言わず一杯行こうや」と(笑)。そのままタクシーでたしか銀座に行きました。


黒川 あんなことあるんやね。


後藤 ほんとに。彼女と歩いてなくてよかった。(笑)

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