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ベネズエラで何が起きたのか――マドゥロ拘束と政権移行プロセスの真相

坂口安紀(ジェトロ・アジア経済研究所主任研究員)

選挙不正を暴くみごとな証明劇

 マチャドら反政府派は、2024年大統領選挙を戦うにあたって周到な準備をし、みごとな方法でゴンサレス勝利を証明してみせた。一方、選挙管理委員会はマドゥロ勝利と発表するのみで、それを証明する詳細な集計票を公開していない。

 ベネズエラでは20年以上前から機械投票が行われている。投票が締め切られると投票機は1台ごとに集計結果を中央選管に送信し、集計票を複数枚印刷する。データは暗号化されており改竄(かいざん)ができず、集計票のQRコードにはそのデータが埋め込まれている。選管スタッフ、与野党双方の立会人は集計結果を確認し署名したのち、それぞれ持ち帰る。

 今回マチャド陣営は、全国の反政府派立会人にある作戦への協力を極秘に要請していた。集計票を受け取ったらまずQRコードを読み込み、反政府派の選挙対策本部に送信すること。次にスキャナーでその集計票をスキャンして画像を送信すること。最後に現物を届けること。

 その結果マチャドらは、全国約3万台の投票機のうち2万5000台以上が印刷した集計票の画像を、わずか2日ほどでインターネット上のプラットフォームに公開し、詳細な集計結果を発表することに成功した。これは全投票の85%をカバーしている。

 それらの画像や集計結果は今でも日本からでもオンライン上で確認できる(Resultados con Venezuela)。それらは、マドゥロの得票率30%に対してゴンサレスが67%で大勝していること、またすべての州およびスラム地域や軍基地がある選挙区でもマドゥロが敗北したことを示している。データが暗号化され改竄できなくする技術により選挙結果の真実性を担保したうえに、全投票の8割以上をカバーする証拠をインターネット上に公開するという、みごとな証明劇であった。

 マチャドはノーベル平和賞受賞スピーチ(長女が代読)で、この作戦について語っている。彼女らは、QRコードを読むためのアプリ、集計票をスキャンするスキャナー、インターネット接続を確実にするスターリンクのアンテナ、それらを操作するPCを一式として、全国の反政府派ボランティアに届けた。マドゥロ政権下で設置された数多くの検問所を潜り抜けるために、フルーツを運ぶトラックに隠して運んだとのエピソードや、チャベス派にばれないよう夜明け前に村の教会の裏の部屋で市民ボランティアにトレーニングを行ったなどのエピソードが語られた。そしてこの作戦でゴンサレスの勝利を証明したことは、全国60万人の市民ボランティアの勝利だと彼女は語った。

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