中央公論 最新号詳しくはこちら

加藤勝信・厚労大臣「厚生労働省の分割も不断の議論を」

加藤勝信(厚生労働大臣)×竹中治堅(政策研究大学院大学教授)

厚労省に「働き方改革」

竹中》今回のコロナ危機に始まったことではありませんが、まずはこのコロナ危機での行政の逼迫、公務員の疲弊について伺いたいと思います
 厚生労働省は感染症対策の当該官庁ですが、一方で「働き方改革」の旗振り役でもあります。去年施行された働き方改革関連法では一〇〇時間以上の残業には罰則が設けられながら、国家公務員は適用外です。厚労省の過重労働についてはどのようにお考えでしょうか。

加藤》二〇一四年に内閣人事局が発足し、私が最初の内閣人事局長を拝命しました。また、かつては大蔵省の役人でもありました。それらを踏まえて考えるのですが、まずは基本に立ち返って対策する。残業量を把握し、時間に則って残業代が支払われることが基本です。そこからいかに残業を減らすか。国家公務員の労働基準法の適用問題は別にしても、「隗より始めよ」で、民間だけではなく、政府においても率先して取り組むべき課題だと認識しています。私が厚労大臣になったとき、霞が関で最も残業代が多いのが厚労省でした。そんな中で若手から働き方の具体的な改革案が出てきた。すぐに着手できるもの、時間がかかるもの、優先順位をつけながら一つひとつこなし、先般も若手の皆さんと厚労省改革を議論しました。その矢先にコロナが起きたのです。
 先頃、小泉進次郞環境大臣のお計らいで環境省から、また他省庁や、民間からも厚労省にサポートに入って頂きました。厚労省全体を見て、特定の働き手に負荷が集中しすぎないように対応しているところです。

竹中》他の省からはどれくらいの人数が応援に入っているのでしょう。

加藤》環境省からは合計五三名にほぼ専従の形で入ってもらっていました。また、防護服やマスクの手配などで経済産業省の方から相当の支援があります。内閣官房にはコロナ対策本部が置かれ、オールジャパンで対策に取り組んでいます。

竹中》これは厚労省だけではない、官庁全体にまたがる問題ですが、官僚の過重労働の一因として国会での質問通告があると思います。「質問は審議の二日前の五時までに通告してください」と申し合わせましたが、まったく守られていません。

加藤》内閣府の特命担当大臣のとき、私も各党にお願いに回らせて頂きました。しかし、国会の中で委員会がいつ設定されるかわからない問題もあり、通告時間は「誰の問題か」とはなりにくいものです。一方で、開催が事前にわかっている場合は割と早く各省に質問を頂けるようになってきました。質問を受ける側も、大体の内容がわかれば、該当部局以外の人は待機せず帰るようになりましたし、または、家でウェブを使って対応できるようにもなりました。色々な工夫はされてきています。

竹中》厚生労働省は、かつて厚生省と労働省に分かれていたものを一つになって処理しています。よって法案の審議もタイトになり、大臣の負担も非常に大きくなっていると思います。自民党の行政改革推進本部からは厚労省の分割を検討するという案が出ていますが、これについてはどうお考えでしょうか。

加藤》これは、政府をどのように作るかという大きな話でもあります。

(以下略)

〔『中央公論』2020年10月号より改題して抜粋〕

加藤勝信(厚生労働大臣)×竹中治堅(政策研究大学院大学教授)
◆加藤勝信〔かとうかつのぶ〕
1955年東京都生まれ。東京大学卒業後、大蔵省入省。95年に退官し、加藤六月氏の秘書を務める。2003年衆議院議員初当選。内閣府大臣政務官、内閣官房副長官などを務め、14年初代内閣人事局長。15年第3次安倍第1次改造内閣で内閣府特命担当大臣及び一億総活躍担当、女性活躍担当等大臣として初入閣。17年より厚生労働大臣及び働き方改革担当大臣。
 
◆竹中治堅〔たけなかはるかた〕 1971年生まれ。93年東京大学法学部卒業、大蔵省入省。98年スタンフォード大学修了、Ph.D.(政治学)。99年より政策研究大学院大学助教授。2010年より現職。