なぜ、つまずいたのか
シンクタンクの日本再建イニシアティブによる『民主党政権失敗の検証』(中公新書、2013年)は、「マニフェスト」「外交・安保」「政権・党運営」といった項目ごとに、インタビューなどによる当事者たちの言葉を交えながら、回顧的に政権崩壊の必然を論証していったもの。それは政権を取ったことに浮き足立ち、未熟さから戸惑い、あげくが党内に蔓延(はびこ)る小沢―反小沢の対立のなかで自壊していった者たちの群像劇のようでもある。
民主党は「政治主導」を謳い、その中心は官僚の人事と国の予算編成を政治家が仕切ることであった。しかし鳩山内閣は早々につまずく。
多くの議員たちは与党経験がない負い目から、官僚を必要以上に警戒して距離をつくり、関係を悪くした。また官庁の人事を行おうにも官僚個々人を知らないため、結局は役所に丸投げし、あるいは事務次官会議を廃止したために官邸に情報が上がってこなくなるなどの弊害を起こす。
自民党流の古い政治を刷新する意気込みであった彼らは、現実の複雑さに搦(から)め捕られていくのである。
その象徴が鳩山政権の致命傷となった沖縄の米軍普天間基地の移設問題だ。10年以上に及ぶそれまでの交渉を無視した、鳩山の「最低でも県外(への移設)」発言は事態の混迷を招き、米国や官僚はもとより、国民からも見放されていった。それは「官僚(外務省・防衛省)の専門性と国民の支持を重ね合わせた統治のための安全保障政策を生み出しえなかった」ことの帰結であった。
また本書は、民主党は政治の本質を見誤っており、そのために議論をまとめられず、党として一致した行動を取れない体質にあったと断じる。それについて同党の逢坂(おおさか)誠二はこう述懐している。明確な論理や解答がないからこそ政治の場に持ち込まれている問題を、議論すれば答えが出ると思い込み、「議論することと、決定することと、納得することにそれぞれ違ったものがあるということが分かってない」と。
後に安倍晋三政権が「決める政治」と繰り返すのはこの裏返しだ。