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urbansea 10年後に「読む」民主党政権――蹉跌の歴史を知るためのブックガイド

urbansea(ノンフィクション愛好家)

野党との違い

 山口二郎・中北浩爾編『民主党政権とは何だったのか』(岩波書店、2014年)は、関係者たちのオーラルヒストリーだ。3内閣それぞれを象徴する箇所を取り上げてみる。

 野党時代の民主党ではマニフェスト実現のための財源の裏付けが課題となっていた。それが政権担当能力の証明になるからだ。これに対して多くの民主党議員は、ベテランの藤井裕久が「財源は政権を取ればなんとかなる」と言うのを信じた。

 鳩山もその一人だ。本書で彼は「大蔵省出身で細川・羽田内閣で蔵相を経験された方の主張でしたから迫力がありました」と述べる。また野党時代の政調会長・直嶋正行が、一般会計と特別会計を合わせて見れば、その中からムダ遣いの削減などで不足分を捻出するのは「たやすいことだ」と主張したのを鳩山は持ち出し、それを「頑張ればできると、みんな信じました」と回想する。どちらも責任転嫁の言葉に聞こえる。

 東日本大震災当時の菅内閣はどうか。総務大臣だった片山善博は、菅について「イライラして怒鳴るし、大きな組織を使うというトレーニングができていなかった」と酷評。それは震災時に限ったことでも、菅一人に限ったことでもなく、民主党幹部全般に言えることだと振り返る。

 菅内閣は政権獲得時のマニフェストになかった消費税率引き上げを打ち出し、野田政権はその実現を果たす。本書で野田は当時の党内における意思決定の難しさを語る。延々と議論して進んだかと思えば振り出しに戻るのを繰り返したことから、自民党の総務会(全会一致が原則だが、反対した者は差し替えていく)を羨むようなことまで言う。

 そして野田は「脱原発」が選挙の争点になると見込んだが、2012年12月の衆院選の頃には街頭などでそれを訴えても聴衆の食いつきが悪く、「反応を見て次第に訴える方もそこから離れていったのです」と回顧する。かくして民主党は役割を終えるように黄昏(たそがれ)を迎え、自民党に政権を明け渡すことになるのだった。

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