亀井静香にはこう見えた
民主党政権は国民新党、社民党との連立政権として誕生した。前者の党首は亀井静香である。その著書『永田町動物園』(講談社、2021年)は、長い政治生活で出会った100人の人物評だ。たとえば鳩山について「対米従属からの脱却という鳩山の民族主義的な思想が好きだった」と意外な評価をするなど面白い。
社民党党首だった福島瑞穂についての回は、とても寓話的である。
あるとき福島が「私と亀井さんは「郵政民営化反対」「死刑廃止」「義理人情」、この3つしか共通項がないですよね」と言ってきた。すると亀井は「3つも同じなら上出来じゃないか」と返したという。
あるいは福島が鳩山政権での普天間基地の辺野古移設決定の際、閣議で署名を拒否して連立を離脱したことにふれ、亀井は信念を理解しつつも「一度手にした政権を自分から手放すなんて、逃げるのと変わらない」と政治姿勢の甘さを指摘する。
これらは福島に限ったことではなく、民主党を含む非自民の政治家の習性を言い当てていようか。
自民党は寄せ集め集団で、権力への執着によってひとつにまとまっているだけだと言われる。反対に、理念へのこだわりの強さや、権力欲のなさは良いものとされるが、そうであるばかりに二大政党制を目指すどころか離合集散を繰り返し、野党乱立の時代を生んだのである。
(続きは『中央公論』2023年1月号で)
urbansea(ノンフィクション愛好家)
◆urbansea〔あーばんしー〕
1973年生まれ。会社員。『特選小説』などで書籍や雑誌に関する記事を執筆。
1973年生まれ。会社員。『特選小説』などで書籍や雑誌に関する記事を執筆。