(『中央公論』2023年5月号より抜粋)
霞が関から離れていく若者たち
──霞が関で働く官僚が疲弊しているという声が、各方面から聞こえてきます。実際に若くして退職する官僚も多く、国家公務員採用試験の申込者数も2017年度から21年度まで5年連続で減少しています。旧自治省(01年に総務省に統合)の官僚から地盤を持たないまま政治家へと転身された小川さんと、厚生労働省の官僚からコンサルタントへと転身された千正さんには、今の霞が関はどのように映っていますか?
千正 若手官僚の離職はもはや普通のことで、誰も驚かなくなっていますね。僕自身は01年に入省して19年9月に退官していますが、厚労省からバンバン辞めるようになった官僚たちは、08年度以降に採用された若手・中堅です。
小川 民主党政権の頃に入省した世代ということですね。
千正 そうですね。とはいえ彼らも入省してすぐに辞めたわけではありませんが、ここ5年ほどは20代での退官者も増えています。
小川 なるほど。厚労省に関しては、特にコロナ禍も影響しているのかな。
千正 コロナもあるでしょうし、政策決定プロセスが1990年代までの官僚主導から、ここ20年で官邸主導へと転換したこともあると思います。官邸主導、政治主導そのものは、選挙により国民の信託を受けた政治家が政策を決め、官僚たちが実行するということですから、もちろん正しい。ただ、政権中枢が支持率を気にするあまり、法律や制度に詳しい人たちの知見を取り入れずに政策を作り、実行プロセスや利害調整を考慮しないまま実施する傾向が強まったことで、官僚たちの負荷が大きくなっているとは言えると思います。
小川 それは強くありますよね。このところ、放送法の政治的公平性に関する総務省の行政文書が国会を騒がせていますが、官僚たちには相当な怒りが溜まっていたんじゃないかな。ああいう文書はこれからも出てくると思います。
千正 外に漏れることは、もう防げないでしょうね。
小川 本当にそうだ。政治の側がどうかしていますよ。