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天皇訪中実現に暗躍した田中清玄...昨年末に公開された外交文書の余白を読む

徳本栄一郎(ジャーナリスト)
田中清玄ーー二十世紀を駆け抜けた快男児/文藝春秋
(『中央公論』2024年4月号より抜粋)

 外交は、政治家や官僚だけで動かない。時に予想もしない人物、組織が現れ、裏で動き、やがて歴史を変える。天皇の中国訪問も、そうした一つだったかもしれない。

 昨年末、外務省は、1992年10月の天皇訪中についての外交文書(以下、「外交文書」)を公開した。東西冷戦後、平成に入って4年、天皇が初めて中国の地を踏んだ。昭和の不幸な戦争に、「戦後のけじめ」をつける歴史的出来事だった。

 公開された文書は、それまでの日中両国の交渉、自民党への根回し、マスコミ工作を生々しく描いた。だが、注意深く読むと、巧みに"消毒"した跡があるのに気づく。文書で触れなかった経緯、意図的に伏せた箇所である。逆に言えば、この抜けた部分を知ることで、天皇訪中の意味が見える。それによって私たちは、昭和と平成という時代を真に理解することになる。

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