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「富岳」の正体④ 逆転の発想から生まれた注目AI企業の自主開発スパコン

土井裕介×聞き手:小林雅一

AIチップとは何か

─MN─3に搭載されたAIチップ「MN─Core」も自社開発されましたが、その特徴は何でしょうか。そもそもAIチップとは何を意味するのでしょうか。

 まず「AIチップとは何か?」というご質問ですが、私個人の考えでは「ディープラーニング専用のプロセッサー」以上の意味はないと思っています。そしてディープラーニングで使われる計算は、その大部分が「行列の計算」です。それに適した回路の構成があるわけです。

 一方、GPUは「グラフィクス・プロセッシング・ユニット」の呼称からわかるように、もともとはビデオ・ゲームなどの画像処理用に開発された専用プロセッサです。こうした画像処理にも行列計算が多用されるので、あるときAI研究者が「これはディープラーニングの行列計算にも応用できる」と考え、ここからGPUがAI分野でも使われるようになりました。しかし、グラフィック処理(画像処理)には行列計算以外の作業も必要です。そのためのさまざまな周辺回路をGPUは内蔵していますが、これらはディープラーニングには不要なので、AIチップにはこうした余計な回路は内蔵されていません。

─つまりAIチップとは「ディープラーニングに特化するために、GPUから余分な機能(回路)を削ぎ落としたプロセッサー」なのですか。

 思想的にはそういう面もありますが、もともとの設計が根本的に違います。PFNが神戸大学と共同開発したMN─Coreは、チップ内部の階層構造におけるデータの移動など、かなり細かい部分まで制御可能になっています。高いスキルを持った技術者であれば最大限に使いこなして、性能をフルに引き出すことができるはずです。

─グーグルも以前から「TPU」と呼ばれるAIチップを開発していますが、MN─Coreはそれとも共通性があるのでしょうか。

 MN─CoreとTPUはチップの作りはかなり違うのですが、行列計算に特化しているという点では似ている部分はあると思います。

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