「民主化」が意味するもの
人工知能開発に関しても、「当社はAIを民主化する」といった主張を掲げる会社が後を絶たなかった。ならば、あなたの会社は社長をユーザーの投票で決めるのか? と聞くと決まって薄ら笑いをされるのに、である。
生み出したAIを売り込む時も、「民主化」という言葉を積極的に使っていた会社はいくつもあった。典型的なのはMicrosoftだ。しばらくの間、彼らのプレゼンテーションの最後は「AIを民主化します」で締めくくられていた。
たちの悪い冗談である。
確かに、世間では独裁国家と認識されている北朝鮮も、正式名称は朝鮮民主主義人民共和国だ。それでも企業体よりはいくばくか「民主的」だろう。実態はどうあれ、選挙があるのだから。
先述した会社が掲げる「民主化」の本当の意味は、「うちの製品を買え」というものでしかない。
MicrosoftはAIを民主化すると言いつつ、ChatGPTを開発するOpenAIに大資本を投入し、独占している。
Microsoftの介入によって、OpenAIはその名前と裏腹に全くクローズドな組織に変化した。全てをオープンソースとして提供していたOpenAIは、ソースコードの開示をやめ、クラウドで収益を上げる構造に変質した。事実上の親会社であるMicrosoftのクローンのように。
その上、もっと悪いことに、OpenAIが提供する「API(アプリケーション・プログラム・インターフェース)」は短時間の間に大量に呼ぶと、いとも簡単にストール(使用不能)する。正当な料金を払っているにもかかわらず、だ。
意図的なものかそうでないかはわからないが、これを回避するにはさらにMicrosoftが用意したAzureを使うしかない、とも言われている。これが「企業の語る民主化」の正体である。だから現在、GPTのAPIを使用してまともなコンシューマ向け製品を作ることはできていない。