急速に進化を続ける人工知能。日本政府も戦略会議を立ち上げ、その活用や対策について議論を始めた。一方、プログラマーで起業家、そして人工知能の開発を専門とする清水亮氏は「信頼に値するAIを生み出せるかどうかで私たちの未来は変わる」と喝破する。その清水さんによる人工知能についての連載、今回のテーマは「民主化の嘘」です。
- ゲーム開発者の間でパニックが起きている
- 改定は爆弾を投げつけたようなもの
- 「民主化」が意味するもの
- そもそもAIは民衆のものだった
- 大規模言語モデル「民主化」の動きが辿る先
ゲーム開発者の間でパニックが起きている
現在、世界中のゲーム開発者がパニックに陥っていることは日本ではまだあまり知られていない。最大手のゲームエンジン企業Unityが突然、これまで徴収してこなかったタイプのライセンス料を要求すると宣言したのである。
新しいライセンスに従うと、開発者は売上ではなく、ゲームがダウンロードされた数に比例してライセンスを支払うことになる。
スマホなどのゲームは大抵の場合、無料でダウンロードできて無料で遊べて、広告を表示したり、ゲーム内要素に課金したり、という仕組みを採用している。いわゆるフリーツープレイというスタイルだ。
しかし、この新ライセンスのもとでは、このビジネスモデルは成立しなくなる。
実は現代のゲームソフトは、かなり簡単に作れそうなモノに見えても、ほぼすべてゲームエンジンというソフトの上で動いている。
なかでも今回ライセンス料の大幅な改訂を宣言したUnityは、スマホはもちろん、WebブラウザやNintendoSwitch、プレイステーションといったコンシューマゲーム機で幅広く使われている。
プラットフォーマーが自らの強力な地位を利用して、理不尽なほどの契約改定を断行する。これはある意味、ウクライナ侵攻のごとく"蛮行"であると言わざるをえない。