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自然の脅威にどう備えるか

深層NEWSの核心
玉井忠幸/近藤和行

◆他人事ではないエボラ

「(エボラ出血熱対策では)日本も人材や物資の供給などを行うべきだ」「(西アフリカでは)医療従事者の人手、医薬品が足りない」=西アフリカ・シエラレオネで治療に当たった足立拓也・豊島病院感染症内科医長(八月二十七日)

玉井 一方、ここにきて死亡率の高さで知られるエボラ出血熱が、西アフリカから世界的に拡大していく兆しをみせています。こちらは天災ではありませんが、危機管理という意味では、これも日本が警戒していかねばならない問題でしょう。

近藤 正直なところ、今年の夏頃には国民も「遠い西アフリカの話だ」と思っていたのではないでしょうか。それが、あれよあれよという間に広まってしまった。

玉井 これだけ人やモノがさかんに行き来するグローバリズムの時代になると、遠い国のことであっても決して他人事ではないわけです。

近藤 十月中旬には、世界各地への拡大懸念が広がったことも一因となり世界的な株安が起きました。日本に感染者が入国することがなくても、感染拡大で世界経済が動揺すれば、我々の暮らしが脅かされることも考えられます。

玉井 それだけに、日本としても病気を封じ込めるための支援は積極的に行っていかねばなりません。日本政府は四五〇〇万ドル相当の援助を決め、安倍首相もオバマ米大統領との電話会談で現地支援を強化することを約束していますが、今後は人的な貢献も含めて考えていくべきでしょう。

近藤 日本のできる貢献ということでいえば、国内企業の開発した未承認薬が患者に投与されて、一定の効果を上げた、といったニュースもありました。創薬は日本経済再生のひとつのカギとも言われている分野ですから、こうしたかたちで日本の底力をみせることができればうれしいですね。

「これほど致死率の高い感染症が国内に入ったことはない。(感染者と)直接の接触を絶つため、水際で防ぐことが必要だ。(流行国の滞在歴などの)自己申告をいかにしてもらえるかが重要になる」=医師で自民党参院議員の古川俊治氏(十月二十八日)

玉井 幸い現時点(十一月中旬)ではエボラ出血熱の日本への侵入は確認されていませんが、今後はやはり「水際作戦」が重要でしょう。ただし、仮に日本に病気が入ってきても、発症前の感染者からは病気はうつらないし、空気感染することもない。米国では西アフリカから帰国した医療従事者を隔離するような過剰対応が問題化したようですが、冷静さを失ってパニック状態になるのが一番怖い。我々一人一人が基礎知識をきちんと身に付けておくことが何より大事です。

近藤 それは「デマを封じる」という意味でも重要でしょうね。

◆問われる指導者の力

「危機管理というのは、治安・防衛・外交と並ぶ国家本来の仕事。その点で安倍首相の認識はしっかりしており、危機管理には適材だ」=佐々淳行・元内閣安全保障室長(十一月六日)

玉井 最後に言っておきたいのですが、国家危急の際には、決断力のあるリーダーがいるかどうかも重大なポイントになります。ここで引いたのは危機管理をテーマにした回で専門家として登場した佐々氏の発言ですが、今後万一の事があった際には、安倍首相にはぶれることなく的確な判断を下してもらわねばなりません。国民としては、指導者の覚悟といったものも政治に求めていきたいところです。

構成/時田英之

〔『中央公論』2015年1月号より〕

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