1970年代頃から犯罪はどのように論じられ、その語り口はいかに変遷していったのか。ライターのパンスさんがその歴史を振り返りながら論じる。
(『中央公論』2022年12月号より抜粋)
(『中央公論』2022年12月号より抜粋)
のっけから自分の話になってしまって恐縮だが、私は1984年生まれで、ちょうど中学生の時に「少年の凶悪犯罪」が頻発していた。当時はメディア上で「キレる10代」といった呼称が使われており、私もその世代に該当する。しかし、私と同世代の人がすぐキレるような人間だったかというと全くそんなことはないのである。
にもかかわらず、そのようなレッテルを貼られることがずっと気になっていた。そもそも世代でくくって何かを語ることそのものに根拠が薄いのは言うまでもない。
ただ、それを前提とした上で、私はさまざまな犯罪そのものというより、「語られ方」に興味がある。犯罪心理学者のようないわば「専門家」とは異なる、文学者、ルポライター、社会学者といった識者たちによって展開された犯罪に対する語りを、本稿では「犯罪論」という名でくくり、70年代前後からの流れを探ってみたい。そこにどのような変遷があったのかを見ていくと、当然、社会の変化も浮き上がってくるだろう。