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岩田健太郎 合理的にリスクを取って豊かな日常生活を

岩田健太郎(神戸大学都市安全研究センター教授)

喫煙による健康被害を考える

 価値の交換は喫煙に関しても言える。喫煙が喫煙者の健康を害することは間違いない。禁煙によって心臓の病気や癌になるリスクが減るというファクトは、医学的にはっきり分かっているからだ。このファクトを受け入れずに、「喫煙しても癌にはならない」などと言う人もいるが、それはただの願望であって、願望とファクトを一緒にしてはいけない。

 そのうえで、煙草を吸うことには、気持ちがすっきりしたり、仕事が捗ったりするといったメリットがあるのも事実だ。煙草を吸わないことで長生きできるメリットと、吸うことによるメリットのどちらが自分にとって大きいか。これは個々人の価値の問題で、本来は、喫煙者個人が自分で判断することであろう。

 ただし、煙草には依存性があるので、本人がやめたいと思っていてもやめられない状況にある場合は、やめるための医療的なサポートが必要になるだろう。

 話が複雑になるのは副流煙の問題だ。副流煙による被害は避けたほうがいい。家族に煙草を吸う人がいることによって健康被害を受けるのは理不尽である。家庭内の副流煙の問題に関しては、私は基本的には家族で相談するしかないと考えている。多くの場合は、家族で話し合い、家の中では吸わないといったルールを決めることになると思う。

 ただし、家族が納得しているとしても、副流煙から子どもを守るための仕組みは作ったほうがいい。児童虐待と同じで、「家族の中のことだから第三者は関係ない」というわけにはいかない。家族の中で合意が得られない場合には、第三者が介入する必要もあるだろう。

 副流煙の被害について、現在の医学で分かっているのは、長期間にわたり近くにいる人が煙草を吸っている場合にリスクがあるということだ。

 そのため、例えばスペインやニュージーランドでは、建物の中での喫煙は厳しく禁止されているが、屋外での喫煙は容認されている。ところが日本では、多くの自治体で路上喫煙が禁止されているという現状がある。

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