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図書館は外国人住民のシェルターになれる...多国籍タウン・大久保と向き合って

米田雅朗(新宿区立大久保図書館館長)

シェルターとしての図書館

――ここまでお話を聞いて、これまで抱いていた図書館のイメージとは異なるように思います。


 一般的に図書館など公的な機関は、利用者に対して受け身なイメージですよね。私はそうした姿勢は打破したいと思っています。たとえば、イベントのチラシをただ置いておくだけではなくて、スタッフから利用者に声をかけて誘うようにしています。本館には中国出身と韓国出身のスタッフがそれぞれいるので、それらの国の利用者であれば、こちらからどんどん話しかけて誘いますね。職員から「こんにちは」と声をかけたほうが、ホッとすると思うんですよね。「ここはいていい場所」「あなたの居場所なんだ」というメッセージを伝えることにもなる。

ゴミの出し方を案内するパンフレットなど

 この「居心地のいい場所」という発想は、北欧、特にデンマークの公共図書館の取り組みを研究している慶應義塾大学の和気尚美さんの話を聞いてから意識するようになりました。北欧諸国は移民に対する政策が進んでいて、図書館も重要な役割を果たしているそうです。

 和気さんから聞いたのですが、現地の移民の利用者にヒアリング調査を行ったところ、「ここに来るとホッとする」「用がなくてもここに来てしばらくここにいる」と答えた方がいたらしいんです。図書館が移民にとっていわばシェルター、セーフティーネットのような存在になっている。大久保図書館もそうした存在になることを目指しています。

撮影:種子貴之

(続きは『中央公論』2024年6号で)

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米田雅朗(新宿区立大久保図書館館長)
〔よねだまさお〕
1964年東京都生まれ。劇団員や出版社勤務を経て、図書館員となる。2011年より現職。NHK ETV特集「アイアム ア ライブラリアン~多国籍タウン・大久保」に出演。
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