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ようこそ、僕らの新しいお寺へ

松山大耕(臨済宗大本山妙心寺・退蔵院副住職)松本紹圭(浄土真宗本願寺派・光明寺)

経営学を学ぶお坊さん

松山 今日が初対面ですけど、以前、松本さんが立ち上げたインターネット寺院「彼岸寺」のインタビューを受けたことがありました。最初に聞いた時は、「何なんだ、その怪しい集団は」というイメージ(笑)。でもサイトをのぞいてみたらとてもおもしろいし、中身も核心を突いていた。

松本 断られなくて良かった(笑)。二〇〇三年に個人のブログからスタートし、宗派を超えた仏教徒や一般の方が気軽に集える場にしようと"バーチャル寺院"をつくったのですが、今では何人のお坊さんが"出入り"しているのか、私にも分からないくらいになっています。

松山 今はもう次の世代の人たちが引き継いでいるんですよね。

松本 はい。私が最近一番力を入れているのは、お坊さんがこれからのお寺の運営について学ぶ「未来の住職塾」です。今年一月のプレセミナーには全国から五〇人ほどのお坊さんが集まり、この春からは連続講座をスタートします。お坊さんって、仏教の教義は教え込まれても、お寺の運営に関しては全く教育を受ける機会がありません。その結果、時代の変化についていけず、悩みを抱えるお坊さんの声もよく聞きます。だから、社会におけるお寺の役割や根本目的からしっかり勉強しようと。マネジメントの基礎からマーケティング、戦略の立て方、人材、あるいはソーシャルアントレプレナー(社会的起業家)としての役割といった科目を用意して、全国のお寺の事例も紹介しながらやっていこうと考えています。

松山 非常に有意義な取り組みだと思います。他にも、いろいろな試みを実行に移されていますよね。

松本 光明寺は神谷町という東京のオフィス街にあり、昼間には周辺にたくさんの人が働きに来ている。ならば、そういう方々を含めた広い意味での地域コミュニティに対して何かできないだろうかと考えて始めたのが、「神谷町オープンテラス」。カフェっぽい雰囲気の中、お茶を飲んでくつろいだり、お坊さんと話をすることもできる。他にも、本堂での「誰たそ彼がれ」というライブイベントや、寺ヨガもあります。いろいろ取り組んでいるうちに、さまざまな活動の位置づけを整理して自分の軸足を固める必要を感じ、昨年、インド商科大学院でMBA(経営学修士)を取得しました。そうした成果を、いろんなお坊さんとシェアできればいいなと思っているところです。

松山 住職塾、私も受講したくなってきました。(笑)

〔『中央公論』2012年5月号より〕