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澤田晃宏 コロナ移住者の素顔とは

澤田晃宏(ジャーナリスト)

子育て世代の東京離れ

 平澤さんの仕事は、主に技術的なアドバイスや見積もりの作成など、営業社員のサポートだ。営業の前線に立つわけではなく、リモートワークで困ることはないという。狭い賃貸アパートで仕事を続けるうちに「会社の近くにいても意味はない。移住しよう」と決断した。

 移住先を決めるにあたり、最も重要なポイントは「新幹線の駅があることだった」と平澤さんは話す。

「月に一度は必ず出社しなければならないし、何かあったときにすぐに東京に行ける状態にしたかった」

 小田原市に移住し、家の広さは倍になり、家賃は一万五〇〇〇円下がった。仕事環境は数段よくなったと平澤さんは満足している。

 コロナ下で、東京からの転出超過が止まらない。緊急事態宣言下の二〇年五月に、比較可能な一三年七月以降で初めて転出超過に転じ、六月は転入超過に転じたが、翌七月から間近の統計のある二一年二月までは再び転出超過が続いている。

 ただ、年代別に見ると、二十代はコロナ後も東京都への転入超過が続き、東京を離れているのは三十~五十代の子育て世代と、六十代以上のシニア世代だ。リタイア後の移住はコロナ下に始まった話ではなく、子育て世代が東京の転出超過を生み出している形だ。背景には、東京の子育て環境への不満がある。

 

(『中央公論』2021年6月号より一部抜粋)

澤田晃宏(ジャーナリスト)
〔さわだあきひろ〕
一九八一年兵庫県生まれ。進路多様校のための進路応援マガジン『高卒進路』(ハリアー研究所)編集長。高校中退後、建設現場作業員、『週刊SPA!』編集者、『AERA』記者などを経てフリー。コロナをきっかけに、二〇二〇年六月、東京都大田区から兵庫県淡路市に移住。主な取材テーマは、高卒就職、外国人労働者、第一次産業、地方行政。著書に『ルポ技能実習生』『東京を捨てるコロナ移住のリアル』。
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