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高坂はる香 なぜショパンコンクールは日本で人気なのか?

反田恭平、小林愛実が躍進した社会的背景の考察
高坂はる香(音楽ライター)

日本での熱狂的ブーム

 日本でショパンコンクールの人気が一挙に上がったのは、1985年。第11回のコンクールの様子がNHKのドキュメンタリー番組で取り上げられ、優勝した旧ソ連のスタニスラフ・ブーニンが社会現象といわれるほどのブームを巻き起こしたことによる。

 ブーニンはコンクールの3年後、旧西ドイツに亡命。やがてヨーロッパでの演奏活動は減り、日本を拠点として現在に至る。2021年、彼に改めてインタビューをする機会があったが、自らの技術や経験を後進に伝えたいという熱い意欲を語っていた。そして当時については、自分でも日本でなぜあのようなブームが起きたのか理解に苦しむところがある、衝撃的な経験だった、と振り返っていた。

 そのようなわけで続く1990年のコンクールでは、現地に多くの日本人がつめかけた。ファイナルでは、ホールの約1070席のうち260席を日本人が占めていたという。現地の様子を伝える記事には、おかげで音楽を愛する多くのワルシャワ市民がチケットを入手できず、その不満の表れか、日本人が良い演奏をしても拍手がほどほどにしか出なかったとある。しかしそれでも日本の参加者は健闘、最終的には第3位に横山幸雄、第5位に高橋多佳子と、2人が入賞を果たした。

 ついで日本人が2人入賞したのは、2005年。関本昌平と山本貴志が第4位を分けた。以後2010年、2015年と日本人の結果は振るわず、入賞者なし。

 そこにきて今回、再び日本から2人が入賞を果たした。第2位の反田は、2005年のドキュメンタリーを見てショパンコンクールの存在を意識したという。「コンクールの舞台でオーケストラと共演する姿がかっこいいと憧れ、いつか自分もあの場所で演奏したいと思った」そうで、今回はその夢がかなった形だ。

高坂はる香(音楽ライター)
〔こうさかはるか〕
埼玉県生まれ。一橋大学大学院修士課程修了。2005年よりピアノ音楽誌『ショパン』の編集者として世界のコンクールを取材。11年よりフリーランスのライター・編集者として活動。著書に『キンノヒマワリ ピアニスト中村紘子の記憶』など。





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