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ヒトの最大寿命は115歳!? 私たち人間の「死ぬ理由」について新書大賞2位『生物はなぜ死ぬのか』著者が解き明かす

老化の始まりは徐々に“遅く”なっている
小林武彦

ヒトの最大寿命は115歳!?

そして、このグラフからもう一つ重要なことがわかります。それは、寿命が延びている、つまりグラフが徐々に右に移動しているにもかかわらず、グラフの右下は常に一定のところ(105歳付近)で収束しています。これは、最長の寿命はあまり変化していないことを意味しています。

実際に2020年に100歳以上の日本人の数が8万人を突破し、毎年急速に増え続けていますが、115歳を超えた日本人はこれまでたったの11名、全世界でも50名にも満たないのです。

このような統計をもとに分析すると、ヒトの最大寿命は115歳くらいが限界だろうと言われています。逆に言えば、この年齢までは生きられる能力があるということです。

ヒトは老化して病気で死ぬ現代人の死に方は、アクシデントで死ぬ、あるいは昆虫や魚のようにプログラムされた寿命できっちり死ぬのとは違い、「老化」の過程で死にます。老化は細胞レベルで起こる不可逆的、つまり後戻りできない「生理現象」で、細胞の機能が徐々に低下し、分裂しなくなり、やがて死に至ります。

細胞の機能の低下や異常は、がんをはじめさまざまな病気を引き起こし、表面上はこれらの病気により死ぬ場合が多いのですが、大元の原因は免疫細胞の老化による免疫力の低下や、組織の細胞の機能不全によるものです。

例えば1981年以来、日本人の死因の1位はがんですが、がんの多くは加齢に伴うDNAの変異によって生じます。細胞の増殖に関わる遺伝子は、通常、「いい具合」にコントロールされており、必要なときに細胞分裂を起こし、必要がなくなれば停止します。

がんでは、この細胞増殖のコントロールに関わる遺伝子に変異が起こり、制御不能になって増殖し続け、なおかつ転移して全身に広がり、やがて正常な組織を壊してしまうのです。そのため、加齢によるDNAの変異の蓄積とともに、がんによる死亡率が急上昇します。具体的には、55歳くらいからが要注意です(図2)。

図2 年齢によるがんの死亡率(国立がん研究センターがん対策情報センターの資料をもとに作成。『生物はなぜ死ぬのか』より)

こうした事実から見ると、「ゲノムの寿命は55歳」と言うこともできるかもしれません。

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