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日韓関係改善を阻むもの

深層NEWSの核心
近藤和行/玉井忠幸

近藤 少なくとも経済分野に限っていえば、関係悪化によって日本が大きな国益を失っているとはいえないでしょう。中国とは違ってマーケットも小さいし、進出企業がさほど多いわけでもない。一方で、新日鉄住金が韓国鉄鋼大手のポスコに「機密技術を盗用された」として損害賠償を求めて訴訟を起こしたり、電機業界では半導体技術流出などの出来事もあったりして、日本側には韓国企業を警戒する向きもある。今のような状態でもさほど深刻なダメージはない、というのが産業界の本音で、ここでも自ら動かねばならない必然性はないと思います。

◆痛恨の虚偽報道

「強制連行があったとされたことで、日本は世界から不当な侮辱を受けてきた。朝日新聞が三二年間、これを放置してきたことでどれだけ日本の名誉が害されてきたか。日韓関係をこじらせたのも朝日新聞だ」=橋下徹・日本維新の会代表(八月六日)

「(慰安婦狩りがあったという虚偽証言は)影響が大きかった。木刀をふるって女性を狩り集めるという非常にわかりやすい話だった」=現代史家の秦郁彦氏(八月十九日)

玉井 もっとも、慰安婦問題に関して日韓の議論がすれ違ってきた背景には、朝日新聞が一九八二年以降、「戦時中に韓国で強制連行された女性たちが慰安婦にされた」という虚偽の証言をしばしば報道してきた影響も大きかった。朝日新聞は八月に一連の証言を虚偽と認め、九月十一日には訂正が遅れたことを謝罪しましたが、「強制連行はフィクションだった」という部分は今回も韓国ではあまり報じられていません。

近藤 しかも「軍による強制連行で女性を性奴隷にした」というストーリーは、韓国ばかりか世界中にばらまかれてしまいました。一九九六年に国連人権委員会に提出された「クマラスワミ報告」にも、虚偽証言に基づいて「性奴隷制があった」という誤った記述が盛り込まれています。このような記事を長年放置することで新聞への信頼を損なったという意味でも、朝日新聞には猛省を促したいところです。

玉井 同時に、誤解を解いていくためには、対外的な広報活動に積極的に取り組んでいくことも重要でしょうね。

近藤 それには全く同感です。事実関係の間違いを正すところから手をつけていくべきでしょう。

◆関係改善への動きも

「首脳会談の糸口を探ろうという動きは出てきている」=自民党の額賀福志郎・日韓議員連盟会長(三月十三日)

「(七月末に訪韓した際の朴大統領との会談では)日韓関係を良くしたいという思いが伝わってきた」=舛添要一・東京都知事(八月四日)

玉井 もっとも、関係改善への動きも一部で出てきているようです。安全保障の面では日米韓の枠組みは依然重要ですから、アメリカも韓国側の対応には懸念を示している。世論の流れ次第では、朴大統領が自ら動けるような状況も出てくるでしょう。

近藤 知り合いの韓国人からは、「強烈な反日意識が草の根レベルで広がっているかといえば、そんなことはない」といった話を聞いたりもします。

玉井 今後の政治日程でいうと、十一月に北京で開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)で、同様に関係が冷却化している中国との間で日中首脳会談が実現する可能性が取り沙汰されています。そこで日中対話が復活すれば韓国側も動かざるを得ない。日韓関係を考える上でも、日中関係は大きなカギを握っていると言えそうです。

構成/読売新聞調査研究本部 時田英之

〔『中央公論』2014年11月号より〕

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