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北の核・ミサイル問題を迷走させるこれだけの誤謬

レオン・V・シーガル 聞き手 松尾文夫

イラン宥和策と連動するか

−−ただ「人工衛星」の打ち上げを大々的に予告しただけに、四月のミサイル実験は確実視されるが。

シーガル

 北朝鮮は発射の前に、常に口実を作り出してきた。一九九八年のテポドン実験の時も、その二ヵ月前に彼らは声明を出し、われわれと交渉しろ、と言った。もし交渉に来なければ発射実験をやるぞ、と。もちろん米国は交渉に行かなかった。すると彼らは同年八月に発射に踏み切った。一九九三年のノドン実験の前もそうだった。イスラエルが、北朝鮮の対中東ミサイル輸出を中止させる誘因として、北朝鮮に援助と外交承認を与えようとしたが、米国がそれをやめさせた。つまり、北朝鮮の行動には必ず理由がある。脈絡のないことはしない。今回、一九九二年の南北合意を破棄する、と言ったのもそうだ。李明博政権が登場して二〇〇〇年と〇七年の南北首脳会談にけちをつけ始めた。韓国は北朝鮮相手のゲームがうまくない。得意なのは北朝鮮の方だ。そんなゲームはやめて、協力関係を試して、見返りに何が手に入るかを見た方がよい。

 したがって、もしミサイル実験を彼らが行っても制裁で応じることは全く意味がないと思うことだ。これを強く言っておきたい。先に述べたように、ブッシュ大統領でさえ、核実験の後、マカオの資金凍結解除で北朝鮮との妥協に応じた。それに「人工衛星」打ち上げと言われると、一九六七年の宇宙条約(Outer Space Treaty)もあり、制裁や撃墜は国際法的にも難しい。米政府の国家情報機関幹部も最近同じような発言をしている。

−−米国民にとって、北朝鮮問題は緊急案件ではないのかもしれない。

シーガル

 たしかに経済問題と比べれば、ほとんどの米国民にとって重要度は落ちる。オバマ大統領は、見返りがどれくらい手に入るか不確かなのに、自らの政治的資本をどの程度北朝鮮問題前進のために使う価値があるのか、と考えるかもしれない。

 だが、これは重要な問題だ。世界中で核拡散が拡大しているからだ。インドとパキスタンのことを、さらにイランの心配をしなければならないのは明白だ。北朝鮮に関して、核拡散防止に成功する道筋がつけば、大いに役に立つ。私の考えでは、それは可能だ。可能性が高い、とは言わないが、可能であるのは確かだ。

(全文は本誌をご覧下さい)

〔『中央公論』2009年5月号より〕