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駐在経験者が語る急成長アフリカのチャンスとリスク

服部孝(豊田通商株式会社常務取締役)×水野達男(NPO法人マラリア・ノーモア・ジャパン専務理事)×平野克己(日本貿易振興機構アジア経済研究所上席主任調査研究員)

平野 今年一月のアルジェリア人質事件は、日本の海外ビジネス展開の歴史上、おそらく最悪の結果になりました。事件は、各企業の課題であると同時に、日本の国としての課題でもあります。六月初めに横浜で開催されるTICAD5(第五回アフリカ開発会議)でも、日本政府がアフリカ側と治安について議論していくことになるでしょう。アフリカ・ビジネスの最前線を経験されているお二人の事件に対する率直な感想からおうかがいします。

服部 日本人も含めた人命が失われ残念な気持ちを抱くとともに、当社の安全・リスク管理体制をもう一度見直し、強化しなければ、と思ったのがまず第一でした。その一方で、心配になったのは、日本企業の進出のスピードが落ちてしまうのではないか、チャンスよりリスクに目がいってしまうのではないか、ということです。欧州や中国はリスクを十分に理解した上で進出していますから、彼らのスピードは変わらない。ここでさらに差がついてしまっては非常に残念だと思いました。

水野 本当にそうですね。僕が事件の報を聞いてまず思ったのは、アフリカ全体にイスラム過激派が跋扈していると誤解してほしくないということです。イスラム過激派が活動しているのは、サハラ砂漠周辺だけで、それ以外の地域は国内政治も経済も安定してきている。日本人の犠牲者が一〇人と多かったのは残念でしたが、尊い命を無駄にしないためにも今後のリスク回避に努めたい。他方、ビジネスにおいてリスクがあるということは、そのリスクをマネージさえできれば一歩ずつ前進できるということでもあります。

〔『中央公論』2013年6月号より〕