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「日本人の論理」と「韓国人の論理」なぜすれ違う

木村幹(神戸大学大学院教授)×李元徳(国民大学教授(日本学研究所長))

対日だけではない朴政権の「強硬姿勢」

木村 二〇一三年二月、朴槿恵大統領就任直後は、これで日韓関係は多少とも改善に向かうのではないかという期待が、日本にはありました。ところが蓋を開けてみたら......。

 日本から見て朴政権の対日姿勢がかなり頑ななものに映るのは、私も理解できます。ただ韓国の国民やマスコミの立場からすると、「右翼的な言動を見せている安倍政権とは距離を置くべき」というのは普通の考え方で、政権も世論を無視するわけにはいかない。

木村 今年の正月に『ソウル新聞』が行った世論調査では、朴大統領の対日政策を「支持」「概ね支持」が合わせて約五割を占め、「支持しない」の約三割を大きく上回りました。これは安倍政権の韓国政策に関する日本国内の支持率より、ずっと高いんですね。
 そもそも朴政権に対する支持率は高いのですが、同じ『ソウル新聞』のデータによると、対日に限らず北朝鮮政策などに関しても、政策の一貫しているところが評価されている。今までの大統領、特に前の李明博さんが、実利を重視して原理原則の部分をやや疎かにしたことにフラストレーションを覚えていた国民の支持を集めていて、そこは安倍さんもちょっと似たところがある。いずれにせよ、韓国も力をつけてきたのだから、日本にも北にも、時には米国にも筋を通すべき、といった空気が韓国国内に醸成されていて、バシッとメッセージを出す朴さんが人気を集めている、という背景は押さえておいたほうがいいかもしれません。

 それでも昨年の十一月頃から、青瓦台をはじめ政府の中でもマスコミの間でも、日韓が今の状態で大丈夫なのかという認識が高まって、改善に向けた動きが活発になっていたんです。

木村 そうですね。

 それが十二月の安倍総理の靖国参拝で止まってしまった。私自身、「首脳会談を開くべきだ」と積極的に発言してきたのですが、そういう発言もしにくくなりました(笑)。恐らく会談は、半年は無理な状況に後戻りです。ただし首脳会談と対日外交そのものとは分けて考えるべき。通常の日韓外交関係は粛々と進める必要があります。

木村 おっしゃる通りで、実際、昨年夏頃から閣僚レベルの交流はかなり頻繁に行われています。逆に安倍さんと朴さんが直接会談しなくても、実務的な日韓外交にさして支障が生じないから、「原理原則イメージ」で売る両者はますます会わないことになる。

 そうかもしれませんね。

〔『中央公論』2014年3月号より〕