どうなる米中対立? 「関与」から「競争」へ アメリカの方針転換 佐橋亮
佐橋亮(東京大学東洋文化研究所准教授)
米中対立の深刻さはバイデン政権になっても変わらず、安保戦略においては警戒感が一段と高まっている。今後アメリカは中国とどう向き合うのか、日本はこの国際状況にいかに臨むべきか。中公新書『米中対立』を上梓した筆者が考察する。
(『中央公論』2021年10月号より抜粋)
(『中央公論』2021年10月号より抜粋)
バイデン政権発足から半年あまりが過ぎ、その世界戦略の中核に中国が置かれていることはすでに自明になった。また同政権は、米欧関係と国際協調体制を立て直すこと、気候危機に立ち向かい、世界的な民主主義の後退を食い止めることなどを主張している。民主党左派からは、軍事偏重でない国際主義を模索すべきとの声もでているが、バイデン政権が唱える外交はトランプ時代を批判し、伝統的なアメリカ合衆国のリーダーシップの回復を強調するものだ。
「国家安全保障戦略」(NSS)の暫定版として例外的に公表された「国家安全保障戦略指針」では、中国は「唯一の競争相手」と表現され、ロシアよりも一段高い注目度を与えられた。これまでに公表された多くの政策方針でも、バイデン政権の世界戦略にとって中国が最大の課題と位置づけられている。アメリカが米中国交正常化後の主流となっていた中国戦略を転換させようとしていることには異論を差し挟む余地がない。
一方でバイデン政権は、気候変動など分野によっては対中協調もあり得るとも主張し、対決ではなく競争が目的だとしている。具体的方策をみても一貫性に欠けたり、不確かな点も多い。バイデン政権の中国戦略をどうみればよいのか。まずは歴史的な文脈から位置づけたい。