教祖は「再臨のイエス」 中国に食らいつく韓国系「邪教」と統一教会
※本稿は、中公新書ラクレ『現代中国の秘密結社 マフィア、政党、カルトの興亡史』の一部を抜粋・再編集したものです。
- 中国へ布教を進める韓国カルト教団
- 異端的である「新天地教会」
中国へ布教を進める韓国カルト教団
近年になり中国当局を大いに悩ませているのが、海外からの「邪教」の流入だ。これには台湾から入った観音法門や真佛宗など仏教系の新宗教もあるが、教団が持つ反社会性や中国共産党との「反りの悪さ」の点でより深刻だと思われるのは、経済発展に沸く中国をターゲットに韓国やアメリカから進出しているキリスト教系のカルトである。
こちらには、強引な勧誘や多額の寄付が日本でも社会問題となった統一教会(世界平和統一家庭連合、中国語では「統一教」)や、教祖の鄭明析(チョンミョンソク)による複数の女性信者への性的暴行事件で知られる摂理(キリスト教福音宣教会、「摂理教」)、かつて1990年代に日本でセックス教団としてセンセーショナルに報じられたアメリカの新宗教・愛の家族(ファミリー・インターナショナル、「天父的児女」もしくは「愛的家庭」)など、悪名高い破壊的カルトが少なくない(なお上記の三教団は中国公安部の資料でも「邪教」扱いされている)。
ちなみに、中国国内で生まれた「邪教」の多くは、1990年代までに農村部や地方都市で流行し、現在はピークを越えてほそぼそと活動する組織が大部分である(法輪功や全能神など比較的活発な集団もいるが)。対して海外由来の新宗教は中国経済が発展した21世紀に入ってから、都市のホワイトカラーや学生の間で勢力を伸ばし、一部は現在も活発に活動している。
2020年2月には、中国に幅広い地下ネットワークを持つ韓国系の新宗教・新天地教会(新天地イエス教証しの幕屋聖殿。中国語は「新天地」)が、社会問題を起こして注目を集めた。ちょうど中国湖北省武漢市で新型コロナウイルスのパンデミックが発生した時期、中国・韓国・日本・台湾などの東アジア各国が封じ込めに躍起になっていた時期に、新天地が武漢市内から韓国国内にウイルスを持ち込み、巨大クラスターを生んだのである。
報道によれば、2月16日に大邱市で開かれた1000人規模の礼拝に参加した60代の女性信者を起点として感染が拡大。同年8月1日時点で、新天地教会経由の新型コロナ感染者は5000人以上に達し、韓国の感染者総数の36%を占めた。ウィズコロナが常識化した現在とは違い、パンデミックの最初期では衝撃的な数字だった。