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佐藤友紀 日本は「子の連れ去り大国」――国際結婚破綻に伴い海外から批判の声

佐藤友紀(読売新聞国際部記者)

海外メディアが一斉に報道

「私の子どもたちは今日、父親とフランス市民権を失った。国際的な逮捕状が出ている人物に、日本の裁判所が親権を与えることに驚いた」

 7月7日に東京都内で開かれた記者会見で、日本在住のフランス人男性はこう憤った。子ども2人を連れて別居した日本人の妻が、この男性に離婚などを求めた訴訟をめぐり、東京家裁がこの日、離婚を認め、子ども2人の親権者を妻とする判決を言い渡していた。

 判決によると、男性と妻は2009年に結婚したが、16年以降に関係が悪化。妻が18年8月、都内の自宅から長男と長女を連れて別居した。フランスの裁判所は妻に対し、子どもを連れ去って男性に面会させないのは略取容疑などにあたるとして、昨年11月に逮捕状を出している。

 東京家裁の小河原寧裁判長は、妻が子どもを男性に面会させない根拠としていた夫の暴力について、「事実と認められる証拠はない」と指摘して主張を退けた。一方、子どもが順調に育っていることなどを理由に、妻が親権者になるべきだと判断した。

 男性側の弁護士は、「(妻側は)DVがあったから子どもを連れて行かざるを得ないという主張を展開していたのに、DVは認定されなかった。裁判所は、連れ去りに問題がなかったかどうかを判断すべきだったのに、『今すくすく育っているから問題なし』では、誘拐をそのまま容認しているということだ」と声を荒らげた。

 これに対し、妻側の弁護士は、「日本では裁判上の離婚と親権を求める当事者は、子を連れて別居をすることを前提とした離婚制度を採っているため、(妻側の行為は)誘拐罪に該当しない。逮捕状は不当で取り下げられるべき」とのコメントを発表した。

 このフランス人男性は昨年7月、東京五輪開幕直前に都内でハンガーストライキをし、SNSなどを通じて問題を提起していた。男性の訴えは、「日本は子どもの連れ去り大国」などとして世界各国で報道され、欧米や中国、オーストラリアのほか、タンザニアなどアフリカ諸国の新聞でも記事化された。

 五輪開会式に出席するため来日していたフランスのマクロン大統領は、同月24日に菅義偉首相(当時)と会談した際、この問題を取り上げ、会談後に発表された共同声明にも「両国は、子の利益を最優先として、対話を強化することにコミットする」との文言が盛り込まれた。フィリップ・セトン駐日仏大使にインタビューを申し込んだところ、この会談を受け、今年3月末に両国の外務省、法務省の代表者による初の二国間協議が行われたことを書面で明らかにした。

 セトン大使は、日本における子どもの「連れ去り」が日仏の外交問題になるかとの質問に対し、「日仏両国間の問題ではないが、『火種』にならないよう留意する必要がある」と回答した。その上で、「我々はこの問題をめぐって定期的に欧州連合(EU)加盟国代表などと手を携えて行動している。必要であればいつでも懸念を表明し続ける」と回答した。

 問題は日本とフランスの間にとどまらない。

「子どもに会おうとしているだけなのに、なぜこんな目に遭わないといけないのか」


 都内で取材に応じたオーストラリア出身の男性は、子どもと一緒に遊んでいる写真を何枚も見せながら、涙をこらえきれず、肩を震わせた。

 男性の日本人の妻は19年、男性が子どもに暴力をふるったとして子どもを連れて家を出た。男性は暴力を否定し、子どもに会う手がかりをつかむため、妻の両親が住むマンションの共用部分にいたところ、警察に通報された。男性は住居侵入罪で逮捕され、東京地裁で懲役6月、執行猶予3年の有罪判決を受けた。

 この男性の妻が離婚などを求めた訴訟の控訴審で、東京高裁(木納敏和裁判長)は今年7月20日、離婚を認め、子どもの親権者は母親(妻)と判断した。男性は判決を不服として最高裁に上告した。

 男性の地元であるオーストラリアやアメリカなどでは、男性は「婚姻関係が破綻したら片方の親しか子どもに会えない日本の制度の犠牲者」(AP通信)だと報じられた。

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