官邸大崩壊

普天間移設問題はこうして泥沼化した
上杉 隆

決着をつけるためには

 米国はもはや諦観している。

「トラスト・ミー」と宣言した五月末の日本政府の決着を静かに見守っているだけだ。 

 米国が普天間について踏み込んだ発言をすることはないだろう。それが少しも得にならないばかりか、むしろ発言することで日本政府に言質を取られ、責任を押し付けられる可能性が増していくからだ。

 だからこそ、核安全保障サミットでのオバマ米大統領は、日本の首相との会談を拒否し、ワーキング・ディナーの席上での懇談で済ませたのだ。

 そもそも、今回の普天間飛行場の移設騒動は米国が望んだものではない。日米合意によって一四年前に決着したことを、勝手に日本が再燃させただけの話である。

 米国の本音を語れば、普天間移設問題で日本国内が揉めようが一向に構わない。なぜなら揉めれば揉めるほど、現行運用の期間が延びて、今の普天間基地を使い続けることができるからだ。

 五月末に決着期限を切った鳩山首相だが、いまだ本心を見せていない。時間は刻々と過ぎていく。四月二十一日の党首討論で鳩山首相は昨年十二月中の決着ができなかったことを悔やんだ。

「昨年十二月に、エイヤッと辺野古に決めていればどんなに楽だったか」

 だが、時機は失したようだ。その時点で岡田外相・北沢防衛相の方針に乗っていれば、今ごろ、この問題は解決済みであった可能性が高かったのだ。

 それを官房長官が検討委員会の委員長としてでしゃばり、鳩山首相も彼に問題を委ねたことで政権は泥沼に嵌っていった。

 その平野官房長官はこう語っているという。

「最後は、俺が責任を取ればいいんだろう」

 平野官房長官は、まさか長官を辞任するだけで済ませようとしてはいまい。もはやそれで済む問題ではなくなっている。

 普天間問題は、平野長官の問題になっている。彼の存在が普天間解決の最大の障害なのだ。仮に平野氏が政治責任を取るというのならば、ひとつだけしか方法は残されていない。議員辞職。それ以外に沖縄の人々は彼を許さないであろう。

(全文は本誌でお読み下さい)

〔『中央公論』2010年6月号より〕

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