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「一強多弱」で萎む野党再編のゆくえ

永田町政態学

 野党とは本来、国会で政府・与党の政策や不祥事などを厳しく追及するのが役割だ。

 しかし、六月二十二日に閉幕した通常国会では、自民党「一強」時代を反映し、「多弱」の野党が存在感を示す場面はほとんどなかった。特に、民主党と日本維新の会は、政府・与党に向けるべきエネルギーを党内対立で消耗してしまった感が強い。

 六月十八日、民主党の蓮舫元行政刷新相ら反執行部派の国会議員約一〇人が、国会内の一室で海江田万里代表を取り囲んだ。

「海江田さん、あなたが立候補してもいいから、代表選を前倒しで行うべきだ」

 議員らは「このままでは来春の統一地方選を戦えない」「民主党を離党する地方議員が止まらない」と訴え、代表辞任を迫った。海江田氏は「意見は受け止める」と神妙に答えたが、首を縦に振ることはなかった。

 民主党規約には代表リコールの規定がなく、海江田氏は自ら代表を辞さない限り、来年九月の任期満了まで務めることができる。これに反発するのが、前原誠司元代表、玄葉光一郎前外相ら反執行部派だ。前原氏らが今、「海江田おろし」にこだわるのは、二つの理由がある。

 一つは、海江田氏自身が昨年七月の参院選敗北直後、今後一年間で党勢拡大が実現しない場合、代表を辞める考えを示したこと。もう一つは「来年春の統一地方選以降、衆院解散がいつあってもおかしくない。野党再編や野党間の選挙協力を急ぐべきなのに、海江田氏には主導する意志も力もない」(前原氏周辺)と見ているためだ。

 しかし、反執行部派も大きな戦略的ミスをしてしまう。

 前原氏は六月七日のテレビ番組で、日本維新の会の橋下徹共同代表(肩書など当時)と合流する可能性を問われ、「一〇〇%」と答えた。党内では「『海江田おろし』が成功すれば民主党は維新の会と合流するために解党する」との観測が広がった。党内の中間派は「民主党主体の野党再編」を描く議員が大半で、反執行部派と距離を置くようになる。さらに、「海江田おろし」の前哨戦ともいうべき、参院議員会長選(六月十三日告示)で、海江田氏を支持する郡司彰会長が無投票再選を果たし、反執行部派は手痛い不戦敗を喫した。

 その裏には、「参院のドン」、最近では「こぴっとじいさん」とも呼ばれる輿石東参院副議長の存在があった。

 NHK連続テレビ小説「花子とアン」を機に、山梨の方言「こぴっと(しっかり)」が流行しつつある。山梨選出の輿石氏も民主党議員に会うたびに、「苦しい時だが、こぴっとしろよ」と励ましている。

 政権転落後の民主党は、国会議員一一五人のうち、参院議員が過半数の五九人を占める。このため、参院の重鎮である輿石氏は、党内でも隠然たる影響力を保っている。輿石氏は「任期途中の代表を本人の意思に反しておろすのは筋が通らない。民主党がバラバラという印象を与えるだけだ」と周囲に語り、事実上、海江田氏の強力な後ろ盾となっている。

 前原氏が「一〇〇%」合流する相手としている橋下氏と周辺は、「反労組」の色合いが強く、労組出身の輿石氏にとって橋下氏らと合流するか否かは、死活問題といっても過言ではない。労組系議員が多い参院が海江田氏を守るのは、こうした事情もある。

 その維新の会は六月二十二日、「分党」を決定する臨時党大会を開き、一年九ヵ月の活動に幕を下ろした。野党再編の方向性をめぐり、橋下、石原慎太郎の両共同代表の路線対立が決定的になったためだ。

 橋下氏は、政権奪取のため、自民党に代わる野党勢力を一つの政党にまとめる「野党結集」路線。石原氏は、「自主憲法制定」などの政策実現のため、政府・自民党との連携も視野に入れる「与野党再編」路線だ。

 石原氏は五月下旬、党の会合で橋下氏系の議員に対し、決別を予告するかのような発言をしていた。
「どうして、おまえたちは、自民党と組んで閣僚を狙わないんだ」

 みんなの党でも、政策実現を重視し、与党との連携も視野に入れる浅尾慶一郎代表に対し、野党結集に固執する一部議員が反発し、火種を抱えている。

 自民党に対抗するのか、連携するのか。野党各党の方向性は定まっておらず、対立と分裂、「縮小」が続いているのが実態で、「拡大」への展望はなかなか開けない。(ゆ)
(了)

〔『中央公論』2014年8月号より〕