佐藤文香 女性兵士活躍の時代と自衛隊の女性登用
佐藤文香(一橋大学教授)
女性兵士が求められる理由
女性兵士の増加の背景として、各国の事情に留意する必要があります。
イスラエルのような例外はありましたが、徴兵制を有する国はこれまで男性のみを対象にするのが普通でした。しかし近年、ノルウェーとスウェーデンが徴兵の対象を女性にも広げています(ノルウェーは2015年、スウェーデンは18年から)。両国はジェンダーギャップランキングでも世界のトップ5に入っており(男女格差が少ない)、男女平等と多様性が軍隊にも必要だという論理で女性を徴兵制に組み込んでいます。このトレンドが今後広がっていくのかは注目すべきポイントでしょう。
いっぽう、韓国でも女性の徴兵が話題になっています。韓国は、北朝鮮との間に軍事的緊張を抱えており、莫大な兵力を維持する必要があります。少子高齢化が日本を上まわるスピードで進み、男性だけで兵力を維持するのが難しくなる中で、女性の徴兵議論は高まっていきました。韓国に先んじて北朝鮮は、2015年から女性の徴兵に踏み切りましたが、北朝鮮の場合は、1990年代の食糧危機の影響が深刻で、男性だけでは兵力が維持できなくなったことが理由とされています。これらを男女平等の進展と単純に捉えてしまうと事態を見誤るでしょう。