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佐藤文香 女性兵士活躍の時代と自衛隊の女性登用

佐藤文香(一橋大学教授)
写真提供:photo AC
 女性兵士の数が増加しているのは世界的な傾向だが、そこにはどのような背景、課題があるのだろうか。佐藤文香一橋大学教授による、論考「『女性兵士』は何を求められているのか」(『中央公論』9月号)のうち、前半部分を抜粋してご紹介。

女性兵士活躍の時代

 2月に始まったウクライナ戦争では、国を守るために立ち上がる女性兵士の姿が報道されましたが、軍隊への女性の進出は世界的な趨勢です。

 歴史をひもとけば、第一次・第二次世界大戦という「総力戦」で、女性たちが動員されたことが大きなきっかけと言えるでしょう。

 女性たちは軍隊にも入りましたが、ここではもっぱら「女性向き」の仕事があてがわれるのが常でした。アメリカの場合、第一次世界大戦に従事した女性のほとんどは看護師で、第二次世界大戦でヨーロッパに派遣された陸軍女性部隊の兵士たちも戦闘には参加していません。イギリスでは、第一次世界大戦中に陸軍女性補助部隊ができましたが、軍務の内容は、掃除、洗濯、調理、事務などでした。

 いっぽうで、ソ連や中国では、第二次世界大戦中に女性兵士が戦闘に参加したことが知られています。

 こうして戦争中は女性たちを軍隊に組み入れたのですが、戦争が終われば彼女たちの貢献を文化的に忘却するというプロセスがどこの国でも見られました。女の居場所はここではない、家庭なのだ、と除隊を迫られ、家に帰されたのです。

 しかし、1973年のアメリカに続き、冷戦終結後にはヨーロッパ諸国を中心に徴兵制が志願制に切り替えられるようになり、その過程で、多くの西洋諸国では、女性を軍隊に組み込む動きが始まりました。

 アメリカの場合は90年代の湾岸戦争が一つの大きな契機となります。この戦争では4万人もの女性兵士が派遣され、メディアなどを通じて人々の目に触れることで、その存在が顕在化していきました。

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