フェミニズムと軍隊
そして、ここに女性兵士の参戦要求がフェミニズムの名の下に行われます。これは日本にはない現象ですから奇異に聞こえるかもしれません。
アメリカには、あらゆる領域で男女は権利も義務も平等に負うべき、と考えるフェミニストのグループがあります。彼女たちは、軍隊で女性が男性と同じように活躍できないことが女性の政治参画の障壁になっていると考え、70年代から、女性も徴兵登録できるようにすべきという運動を行っていました。この流れの中で、90年代の湾岸戦争の時に、「女性兵士を前線に出すべき」と要求することになったのです。
いっぽうで、このような主張に対し、軍に女性が加わることは、アメリカ社会の軍事化を進めるに過ぎず、ジェンダー平等にはなんら貢献しない、と異議を唱えるフェミニストたちもいました。いずれにしても、アメリカでは、女性兵士の存在をめぐって活発な議論が展開されてきた歴史があるのです。
さらに、2000年に国連で「女性・平和・安全保障に関する国連安保理決議1325号」が採択されたことが転機となりました。この決議によって、平和・安全保障の分野にも女性の視点、女性のニーズを取り入れ、女性たちの参画を求めるようになります。これは国際的なフェミニズム平和運動のロビイングの成果でもありました。こうして国連加盟国には、自国の女性兵士の比率を上げたり、PKO(国連平和維持活動)に出す要員にかならず女性を含めたりすることなどが求められることになりました。