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ベストセラーを熱量だけで大量受注してもらった新入社員は 「むしろ何もしないほうが売れるのでは?」から逆転できるのか!?

あの本が売れてるワケ 若手営業社員が探ってみた

3度目の正直。ラストチャンス。一発逆転の全面帯!?

何がいけなかったのか?前回の修正では、「目立たず埋もれていたパネルを目立たせる」ことが目標でした。実際並べてみてもかなりの存在感はあったのですが...、では本自体は目立っているのか?帯を塗ったとはいえ、ベテラン部長の言っていた、「パネルと装丁がちぐはぐ」感は未だ否めず、せっかくパネルに目を止めても、「え、どの本?」となってしまっている可能性がありそうです。

じゃあじゃあ、と私は「帯をパネルの配色に近づける」というアイデアを拡張し、「パネルのデザインの全面帯」を作ることにしました!全面帯というのは文字通り全面カバーサイズの帯ということで、つまり実質カバーのリニューアルであります。

大胆なアイデアでしたが先輩によればおそらくこれがラストチャンス。つまり今週売れなかったら『告白』の仕掛けは店頭から撤退、実績がないため他のお店でも試せない、新入社員岡田のファーストチャレンジはあえなく失敗、ということになると書店担当先輩。神妙な顔で頷く私。

早速翌日、パネルを帯の形にチマチマチマチマチマと修正、それをプリントアウトして本に巻き、「ああ、ちょっとだけ背表紙とズレてる」といっては修正を繰り返し、やっとぴったり合ったと思ったら誤字を発見したりして、ほとんど丸一日かけて完成させました。

店頭に並べてみると壮観!もうこれで誰も迷わない、どころか、ただでさえ「とにかく目立つように」と作った1軍配色なので、6面揃うともうそこにしか目がいかないのでは!?といった具合。

(有隣堂横浜駅西口ジョイナス店様にて撮影)

そしてまた1週間後。気になる結果は、、7冊!!うわあ!!売れてる売れてるウ!

ここで「いやそれでもたかが7冊なのでは?」と思った方、『告白』は文庫にして850ページという、かの『独学大全』にも匹敵する特大鈍器本なので定価が税込みで1200円を越えます。つまり通常の文庫本の約2倍!そうそれは、週14冊売れたのと同じことなのです!!

こうして無事仕掛け販売は継続、他店にも促進を始めることができたのでした。

軌道に乗った仕掛け販売。町田先生の太鼓判に歓喜!!

それから全国展開までこぎつけ、とくに町田先生の出身地であり作品の舞台がある関西ではよく売れ、週間の文庫売り上げランキングにランクインするお店も出てきました。それまでは会社のコピー機でプリントアウト→カッターで切り出して一冊ずつ手で巻くという気の遠くなるような作業を経て出荷していたのが、印刷所で大量に刷っていただけることに!

それにともなって町田先生にこのどぎつい帯を巻いて売ることの確認をとってもらったところ快諾。それどころかなんとご自身のTwitterにて「帯がええ感じになってます」とお褒めくださいました!!自宅でこれを見た僕は歓喜に叫び、泣き、一夜踊り明かしました。Twitterでは「熱いポップです!」など宣伝してくださる書店様も続々!ありがたい限りです。

そしてこのたび念願の重版が決定しました。

運命の本との出会いを演出!出版社営業の仕事とは。

今回本を仕掛けてみて、一口に「パネルを作って売る」といってもいくつかのステップがありました。

(1)発見してもらう→(2)手に取ってもらう→(3)(紹介文を)読んでもらう→(4)買ってもらう

(1)発見してもらう どんなにいいことが書いてあっても、まずは店頭において目立っていなければいけません。当たり前ですが。問題は「ライバルの中で」目立てるかということ。デスクで「いいのできた!」と思っても、店頭に並べるとそうでもない。ここはよく気を付けなくては。

(2)手に取らせる パネルに目を止めてくれただけではもちろんダメ。どの本を指しているのか一瞬でわかるようにすべし!

(3)読んでもらう いよいよ紹介文が読んでもらえます。ドキドキ。そこから本を開いて本文を読んでくれるか?ドキドキドキドキ。

(4)買ってもらう この3ステップを経て買ってもらう、これはリアルな書店でしかあり得ませんが、そここそが書店の魅力。営業のやりがい。本の使命。

「こ、これが出版社の営業の仕事...!!」と、大変勉強させていただきました。

次回配信は3/25(金)を予定しております。ご期待ください!!

告白

町田康 著

人はなぜ人を殺すのか――。河内音頭のスタンダードナンバーにうたいつがれる、実際に起きた大量殺人事件「河内十人斬り」をモチーフに、永遠のテーマに迫る著者渾身の長編小説。第四十一回谷崎潤一郎賞受賞作。 〈解説〉石牟礼道子

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